【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「同窓会の日の夕方には俺、多分出張先から帰って来られると思うんだよね。だから参加はできないけど、もしよかったら迎えだけでも行っちゃダメ……かな?」
「え、そんなの申し訳ないからいいよ!出張帰りなんて絶対疲れてるだろうし」
遠慮して気を遣う悠里に、理人は彼女の両手をギュッと握りしめた。
理人のいつにない不安そうな声色に、悠里は困惑する。
「俺なら大丈夫!こう見えて体力はあるほうだし……」
「でも流石にそこまで甘えられないよ。私は本当に大丈夫だから、ゆっくり帰って来て?」
いつもの理人ならここで悠里の意見に従うはずだった。
けれど、今回ばかりはどうしてかなかなか引き下がってはくれない。
「ごめん、本当はね?俺が心配なだけ。……悠里ちゃんが誰かに取られちゃうんじゃないかって」
「もう、理人くんってば私のこと心配しすぎだよ!みんな友達だし、理人くんが考えてるようなことにはならないから安心して?」
安心させるように笑ってそう言うと、理人は悠里の握っていた手に少しだけ力を込めた。
「……悠里ちゃんは分かってないんだよ。君がどれだけ他の男の目を惹いてしまうのか」
悠里の手を包み込むように握っていた理人は、ゆっくりと少しずつ解いて、そして今度はお互いの指と指を絡ませて恋人繋ぎにしていく。
俯いているせいで理人の表情はよくわからない。
けれど、前髪の隙間から覗くその瞳は真剣そのもので、熱く潤んで見えた。