【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
みんなでホテルのロビーを出てロータリーへと向かう途中、拓也が悠里にスマホを差し出してきた。
「そういえば悠里、今のお前の連絡先知らないわ俺。教えてよ、今度みんなで飲もうぜ」
「あ、うん、いいよ」
悠里がスマホを取り出そうとした、その時だった。
「──悠里ちゃん」
すでに真っ暗になっていた外から突然、すっかり聞き慣れた声が届いた。
振り返ると、そこには出張帰りの理人の姿があった。
家にも帰らずに空港から事前に聞いていた同窓会の会場となっているホテルまで直行した理人は、上質なスーツに身を包みながら息を切らしている。
「え、あれ丹波くんじゃん!?」
「嘘、今日参加できないって聞いてたけど……」
「丹波くん、久しぶりー!」
彼の姿を見た途端、その場にいた悠里の友人たちは一斉に理人を取り囲むようにして声をかけていく。
その端で、拓也は目を丸くして悠里と理人を交互に見比べた。
「え、待ってお前あいつとまだ付き合ってんの?」
「いや、まだっていうか……」
拓也になら言ってもいいかもしれない。
けれど、どこから話せばいいのか悩んでいたそのとき。
「悠里ちゃん!」
それまでいろんな人たちに取り囲まれていたはずの理人が、周りの声を全部無視して真っ直ぐにこちらへ歩み寄ってくる。
そして拓也が差し出していたスマホを遮るように、悠里の前にスッと割って入った。
「えっ、理人くん……?」
「迎えに来たよ、悠里ちゃん。帰ろっか」
理人は悠里の肩をそっと抱き寄せるようにそう言った。
二人の親密な仲に、周囲の同級生たちは一斉に息を呑む。
「ちょっと、やだ!丹波くん!?」
「やっぱり悠里とまだ付き合ってるんじゃ……」
呆然と問いかける同級生たちの声に、悠里はグッと口を噤んだ。
「おぉ、丹波じゃん。……何、お前まだ悠里のこと狙ってんの?一回別れたんだよなぁ?」
悠里との間に入られたことを面白くない様子で笑いながらそう問いかけた。
当時、理人と付き合いはじめたことや、自然と別れてしまったことを悠里は拓也に相談していた。
痛いところを突かれ、悠里は胸が締め付けられる思いで理人を見上げた。
そのとき理人の顔から、いつもの完璧な王子様スマイルが完全に消え去っていた。
「──俺が、今でもめちゃくちゃ悠里ちゃんのこと好きなだけ!」