【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
悠里とは違って周囲の目など一切気にしていない、ストレートすぎる理人のその言葉を聞いたとき、悠里の心臓は大きく跳ねた。
理人はそのまま唖然とする拓也たち同級生を置いて、悠里の手を引いて足早に車を停めている場所まで向かって歩こうとしたとき。
「悠里、また今度な!」
「……っ」
「え?……あ、うん!みんなもまたね!」
うしろから飛んできた拓也のその声に、悠里よりも先に反応したのは理人だった。
理人は繋いだ手にギュッと力を込めると、さらに歩くスピードを早めた。振り向いて手を振りながら友人たちと別れの挨拶を交わした悠里は、そのまま理人に連れて行かれるような形でその場をあとにした。
車内に乗り込むと、少し前までの喧騒とは正反対に静寂が二人を包んだ。
「……ごめんね。強引に連れ帰っちゃって」
「あ、ううん!ちょうどみんなも帰る時間だって言ってたし、わざわざ迎えに来てくれてありがとうね」
ハンドルを握ったまま、理人はシュンと眉を下げて謝った。
さっきまでの堂々とした姿が嘘のように、今は素の理人になっている。
「俺が迎えに行ったせいで冷やかされちゃったよね。……反省してる」
「そんなことないよ。それより私のほうこそ、ごめんね。ちゃんと理人くんの恋人だって言えなくて……」
「謝んないでよ。俺がまだ情けないせいで、みんなに恋人っていうの恥ずかしいよね」
「ち、違うよ!そうじゃない、反対だよ……」
悠里は誤解している理人に大きく首を横に振ってみせた。
「みんな理人くんのこと知ってた。大きな会社で、テレビや雑誌にも載るほど有名で、誰よりも出世してる人だって」
「なっ!俺、そんな有名じゃないよ!?テレビ出演は部長が出る予定だったのに『若い子のほうが映えるよね?』なんて言い出したから選ばれただけだし、雑誌の取材は『働く若者の声を聞く』っていう企画で、部署内の若手同士のジャンケンで負けだだけだし……」
「ふふっ!そんな内容だったんだ」
「そうだよ!だから全然有名とか、そんなじゃないのに……」
「でも、それでもすごいことだよ。そんな完璧な理人くんが、すっかり落ちぶれた私の恋人だなんていうのが……私には、烏滸がましく感じちゃって」
同窓会で感じた劣等感と、縮こまっていた心の内を吐露する悠里。
すると、理人はハンドルを持っていた手を離て、悠里の両手をそっと包み込むように握りしめた。
「悠里ちゃんは、落ちぶれてなんかない」