【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
ベッドの上で仰向けになりながら、理人はまた両手で顔を隠してしまう。
悠里はそんな彼を見てため息を落としながらも、その姿でさえかわいいと思ってしまうのだから、自分も余程なのだと自覚する。
「……俺、悠里ちゃんに十年以上片想いしてきたんだよ?」
「そう、なの?」
「もうダサいところいっぱい見せちゃってるけど、どうせなら悠里ちゃんに格好いいって思われたい。どうすれば本物の王子様になれるんだろうね」
両手で顔を覆ったその隙間から、理人がぽつりと掠れた声を漏らした。
風邪で弱っている理人の、心の奥底に押し込んでいた本音がポロポロとこぼれ出てくる。
そんな不器用で大きな愛を目の当たりにした悠里は、ギュッと胸が締め付けられた。
たまらず悠里は顔を覆っている理人の大きな両手に、自分の手をそっと重ねた。
「私ね? 実を言うと、王子様じゃない理人くんのほうが好きだよ」
「……え?」
悠里はそのまま理人の手をゆっくりと剥がして、しっかりと目を合わせた。
「キラキラしてて、みんなから王子様って呼ばれてる理人くんももちろん格好いいなって思う。でも本当は、私の前でこうやって顔を赤くする素の理人くんが一番好き」
悠里が微笑みながら真っ直ぐにそう告げると、理人は息を呑んで目を見開いた。
「だからね?何が言いたいかって言うと、どんな理人くんも私には格好よく映ってるんだよってこと」
悠里がそう言い終えた瞬間だった。
理人は重ねられていた悠里の手首をグッと掴むと、そのまま強い力で引き寄せてベッドの上へと押し倒した。
「きゃっ!理人くん!?」
「悠里ちゃんごめん。でも、そんなこと言われたら……もう俺、我慢できない」
悠里の上に跨って熱い視線を向けてくる理人は、つい先ほどまで顔を赤く火照らせていた可愛らしい彼ではなくなっていた。
「──今から片想いしてた十年分、取り戻してもいい?」
「え?」
理人は悠里の返事を聞くよりも先に、自分の指を彼女の手に深く絡ませながらベッドに縫い留めて逃げ場を奪う。
そして、深く、濃厚なキスを落とした。
「んっ、理人……くんっ」
「口、もっと開けて」