【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
いつもより高温な理人の熱が、そのまま悠里の中へと溶け込んでいくような錯覚に陥る。
甘く、深く、貪欲に悠里だけを欲しがるような口付けに、頭が真っ白になっていく。
いつもは紳士的な彼からは想像もつかないほど強引で、それでいてひどく切実なキスだった。
だんだんと絡ませていた指がゆっくりと解かれて、理人の大きな手が、悠里の頬から首筋、そして服の裾へと滑り込んでいく。
「悠里ちゃん、もっと……ちょうだい」
普段の理人の声よりも一段低く掠れた甘い囁きと、肌に直接触れる熱い手のひらに、悠里の心臓は壊れてしまいそうなくらい大きく脈を打っていく。
「(どうしよう、熱があるのに……でも、私……っ)」
理人の重たすぎる愛に締め付けられながら、悠里はギュッと目を閉じた。
──ドサッ。
「……え?」
突然、悠里の首筋に重たい何かがのしかかった。
恐る恐る目を開けると、さっきまで余裕のない瞳で悠里だけを視界に入れて見下ろしていた理人が、彼女の肩に顔を埋めたまま、完全に力尽きている。
「り、理人くん……?」
声をかけても返事はない。聞こえてくるのは、すぅ、すぅ、という規則的で、少し苦しそうな寝息だけだった。
「(もしかして、気を失っちゃってる!?)」
悠里は少しだけ安堵したような、それでいて拍子抜けしたように小さく「……もうっ」と声を漏らした。
悠里を欲する理性よりも先に、体力の限界を迎えてダウンしてしまった理人に、悠里はクスクスと笑った。
自分の腕の中で脱力している恋人の頭を撫でながら、そっと横に寝かせて布団をかけた。
「……次は、止めないでね」
そう言って悠里は、そっと理人のくちびるにキスをした。