【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
「昨日は、その、本当にごめんね。俺、余裕なさすぎて、みっともないところばっかり見せて。それに、あんな強引なことまでして……嫌、だったよね?」
耳まで真っ赤に染め上げて、しょんぼりと反省しながら彼女の反応を伺っている理人を見て、悠里はふふっと笑った。
理人が起きたら食べさせようと思っていたお粥の火を止めて、あたたかいお茶を出しながらソファに座らせる。
そして不安そうに目を泳がせている理人の手をそっと包み込んだ。
「全然怒ってなんかないよ」
「ほ、本当に!?」
「本当だよ。理人くんがどれだけ私のことを大切に想ってくれてるのかちゃんと伝わったから……すごく嬉しかった」
「悠里ちゃん……よかったぁ」
心底安心した様子で息を吐く理人を見ながら、悠里はふと、ずっと気になっていた疑問を口にした。
「でもね?高校生のときからずっと好きでいてくれたんでしょ?なのに、どうして一度も会いに来てくれなかったの?」
悠里のそんな問いかけに、理人はビクッと肩を揺らした。
「私、高校を卒業してからしばらくの間、理人くんからの連絡待ってたんだよ?このまま関係を続けていくのか、それともお別れするのか、ちゃんと会って話したかったから」
真っ直ぐに見つめてくる悠里の言葉に、理人はギュッと唇を噛み締めながら目を伏せた。
そして、後悔を滲ませた掠れ声で、絞り出すように口を開く。
「……会いに行ったよ。何度も」
「えっ?」
理人の思いがけない返答に、悠里は目を大きく開いて驚いた表情を浮かべた。
「俺ね、高校卒業と同時に両親から新しいスマホ買ってもらったんだけど、兄がバックアップ失敗しちゃって過去のデータが全部飛んじゃったんだよね。だから悠里ちゃんの連絡先も全部消えちゃってどうしようもなかった。だから……直接会いに行ったりしてたんだよ」
「そう、だったの?」
「こんなこと打ち明けると不気味がられるかもしれないけど、悠里ちゃんの大学の学祭にも行ったし、五年前の同窓会も……こっそり参加してた」
「嘘……。でも私、一度も理人くんと会ってないよ?どうして声かけてくれなかったの?」
「声なんて、かけられなかった」