聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 マリーは以前にウィラルドからレユスットの処分を聞いていた。
 弱みを見せずに、自身の現状を明るく話すレユスットにマリーは何と声をかけたらいいか分からずに黙り込む。
 「もう魔術はやめたよ」
 レユスットは白い手袋を取り、魔王と契約をして紋章があった右手手の甲をマリーへ見せる。
 レユスットの手の甲には何も書かれておらず、綺麗な聖騎士の手をしている。
 「大聖女セレスティナ様に魔王との契約を解除してもらった。最初から必要なかったのに、僕は何を考えていたんだろうな」
 レユスットは地位に固執するあまり、本来の自分を見失っていった。
 地位がなければ何もできないと思っていた。
 そして魔王の誘惑に負けてしまった。
 しかし聖女という地位を失い、普通の少女であるマリーが倒されるはずの魔王を救った。
 レユスットは自分の過ちをマリーが正してくれたように感じて目が覚めた。
 レユスットは後ろ手に隠して持っていた花束をマリーへ差し出す。
 「これは?」
 「僕の気持ちだよ」
 マリーは突然出てきた大きな花束に驚き、レユスットの言葉を聞き返す。
 「僕にとって地位とは強いものだった。しかしアンナ、……いや、マリーの強さを見た。僕の思っている強さとは真逆だった。そのような強さがあると勉強させられたよ。近くにいたのに、何も分かっていなかった」
 レユスットは聖騎士としてそばにいながらマリーから聖女の力を搾取するだけで、何も得なかった自分を悔やむ。
 「はじめから出直そうと思う。それを伝えに来た」
 レユスットはマリーを真剣な表情で真っ直ぐ見つめる。
 「今まで悪かった」
 レユスットは深々とマリーへ頭を下げる。
 「わかりました。レユスット様を応援します」
 レユスットの真剣な気持ちがマリーに伝わり、マリーはレユスットへ表情を緩める。
 「ありがとう。これは僕の精一杯の謝罪の気持ちだ。受け取ってほしい」
 レユスットは頭を上げると、マリーへ花束を差し出す。
 マリーに謝りたいとのことで、この国の花屋の店主に頼み込み、ヘレナにも口添えしてもらってやっと購入できた花束だ。
 色とりどりの花が使われた見栄えのする豪華な花束がマリーの目の前に広がっている。
 マリーは豪華な花束を見つめて一言だけ呟く。
 「わたし、ピンクのバラが好きなの」
 「え?」
 意表を突かれたマリーの言葉に面食らったレユスットは花束を確認する。
 偶然にも花束にはピンクのバラは入っていなかった。
 (ピンクのバラが好き? 違う。マリーはそれだけの意味で言ったんじゃない。きっとーー)
 レユスットはマリーの左手薬指の婚約指輪に視線を落とすと、少し離れた所からしびれを切らしたウィラルドがマリーを呼ぶ。
 マリーは返事をしてウィラルドへ駆け寄ろうとする。
 マリーは数歩進むと、足を止めてレユスットへ振り返って笑顔で告げる。
 「お元気で」
 マリーはレユスットの数歩後ろにいるヘレナへお辞儀をするとウィラルドの元へ帰っていった。
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