聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 「マリー」
 マリーは祈るために閉じていた瞳を開くと一瞬だけ驚いた表情を見せるが、アンナのウエディングドレス姿を見るとすぐ微笑みに変わる。
 マリーが呼ばれた事に気づいてウィラルドも瞳を開くとマリーと同じく驚いた表情を見せるが、マリーが望んでいた事が実現したのだと悟ると優しい視線に変わる。
 アンナはマリーとウィラルドを見つめて、穏やかな声で語り始める。
 「わたしはマリーの中で眠っていたわ。わたしは自分が転生した事に気づいていたけれど、目覚めることはなかった。でも、あの時のキスによってわたしは目覚めた」
 アンナはウィラルドと視線を合わせ、続いて自分の隣にいるエドワルドに視線を合わせる。
 「エドワルド様がいる。そう思ったら、わたしはマリーと共に目覚めていたの。ウィラルドのキスがなかったら、わたしは目覚めることはなかった」
 アンナは瞳を伏せてから、顔を上げて思い出すように語りを続ける。
 「マリーを通してエドワルド様との思い出の村で過ごせて幸せだった。けど足りなかった。マリーがエドワルド様……、ウィラルドとあの村で出会ってくれた。魂が惹かれ合ったと自惚れてもいいのかしら」
 アンナは嬉しそうにはにかんで照れながら言うと、エドワルドと目を合わせて語りを続ける。
 「わたしの事を想ってくれるマリーの気持ちが嬉しかった。だからわたしの秘めた想いをマリーには知ってほしかった。マリー、結婚おめでとう。そして素敵な結婚式をありがとう。あなたがわたしの生まれ変わりでよかった」
 「今までアンナ様にはたくさん支えてもらいました。わたしこそ感謝しています」
 アンナに続いてエドワルドがウィラルドに声をかける。
 「マリーのそばにお前がいてくれてよかった。これからもお前がマリーを守っていけると信じている。ウィラルド、頼んだぞ」
 「エドワルド様、お任せください。聖騎士の名にかけて、夫としてもマリーを守ります」
 ウィラルドは頭を下げて、エドワルドへ新たに誓う。エドワルドはウィラルドの言葉を聞き、満足そうに頷く。
 「そういうことでしたか」
 セレスティナは全てが腑に落ちたように、微笑みを浮かべて息を吐く。
 セレスティナはアンナに聖女の力を与えた女神エイレーネに使わされた天使だ。
 天使セレスティナはマリーが元いた修道院の大聖女に扮し、マリーの運命を見届けるため天界からやってきた。
 その理由はセレスティナは過去にアンナが殉教した際、その魂を天界へ連れて行く予定だった。
 アンナに聖女の力を与えた女神エイレーネはアンナの聖女の功績を讃えて、天界へ迎えるのがアンナにとって最良だと考えていた。
 しかしアンナはそれを断り、再び人間として生まれ変わる事を望んだ。
 その理由が分からなかった女神エイレーネは天使セレスティナにマリーの運命を見届け、マリーと共にアンナの魂を天界へ迎える命を出した。
 セレスティナは夫婦として結ばれて幸せそうにしているアンナとエドワルドを見つめて柔らかく微笑む。
 「今やっとアンナの事を理解できました。わたしの迎えは必要なかったようですね。お幸せにーー。アンナ、マリー」
 天使セレスティナは胸の前で両手を組み、二組の新郎新婦を祝福する。
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