聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 村は歩いて一時間程度で一周できてしまうほど小さかった。
 マリーは道なりに歩いていると住宅が密集している場所へやってきた。
 「わぁ! きれい!」
 マリーの目の前にはおとぎ話に出てきそうな美しい光景が広がっている。
 辺りには伝統的な木組みの家が建ち並んでいる。
 家の所々に色とりどりの春の花々が咲いていて、小さな村を美しく華やかに飾っている。
 「辺境で何もないと言っていたけれど、素敵な村ね」
 マリーは一目で村を気に入り、追放先がここでよかったと思った。
 マリーは住宅地を散策していると、家の敷地から路地へ顔を出している白バラを見つける。
 「あっ! 大聖女アンナの白バラだわ」
 マリーは一輪の白バラに顔を近づける。
 バラは五月から六月頃が開花時期だ。
 まだ四月だと言うのに、一輪の白バラが小さく花開いている。
 この白バラの名前は聖女たちが信仰している大聖女アンナが胸に抱いている白バラと同じ品種のため、そう名付けられた。
 大聖女アンナと呼ばれる白バラは香りが高く、数ある白バラの中でも純潔のような純白が美しい白バラだ。
 マリーは白バラを見つめて聖女だった頃を思い出す。
 「わたしが聖女の時はバラが咲く時期になると、大聖女アンナ様像へ毎日この白バラを生けていたのが懐かしいわ」
 マリーは一輪の白バラを生けると大聖女アンナ像が嬉しそうに微笑んでいるように見えた。
 もうあの聖女修道院で大聖女アンナ像の微笑みを見ることはできない。
 マリーはこれからどうするか迷っていた。
 大聖女セレスティナはマリーを厳格なストリクト教派から自由なリベルテ教派へ変更し、そこで修道女としてやっていけるように手続きをしてくれた。
 マリーは先程ハンナに言われた言葉を思い出す。
 「やりたいこと……」
 聖女の力を失い、聖女を辞めたマリーはこのまま修道女を続けるのか、修道女ではない別の道を選ぶか悩んでいる。
 しかし聖女としての生き方しか知らないマリーはやりたい事もなく、自分にどんな道があるのか想像できなかった。
 マリーは聖女の力を失うと共に自信もなくしてしまった。
 マリーはハンナに言われたやりたい事を探すという初めての選択に心惹かれているが、見つけられる自信がない。
 マリーは失ったものを思い、重たい溜め息を吐く。
 「はあ……。これからどうしよう……」
 マリーは早咲きの白バラに大聖女アンナ像を重ねて見つめる。
< 18 / 39 >

この作品をシェア

pagetop