聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 穏やかな晴天に恵まれた翌日。
 恋愛をしたいと決めたマリーはハンナに「自分がどんな男性が好きか考えてみたら?」と言われて昨日から考えていた。
 マリーは自分自身がどんな男性が好きなのか、明るい日差しが入ってくる自室で考えていた。
 「…………」
 目を瞑って何度も考えてみたが、マリーの空虚な頭の中には何も浮かばなかった。
 聖女だったマリーは男性と話す機会がほとんどなかった。
 それに加えて、以前に所属していた教派に”恋愛や婚姻をせずに生涯を通して神へ祈りを捧げて奉仕する”という決まりがあったため、マリーは今までどんな男性が好きか考えた事がなかった。
 唯一、年齢が近くて話した事がある男性は聖騎士団長のレユスットだった。
 しかしレユスットに酷い事をされたのを思い出し、マリーはすぐに考えるのをやめた。
 ハンナに聞けば、村にいるマリーと年齢が近い男性は少なく、皆すでに相手がいるようだ。
 マリーはハンナの部屋にある数十冊ほどある恋愛小説に目を通したが、理想の男性のイメージは浮かばなかった。
 「はあ……」
 万策尽きたマリーは溜め息を吐いてハンナが書いた恋愛小説をぼんやりと眺めていると、ふと大聖女伝説に登場する英雄聖騎士を思い出す。
 (そういえば、大聖女アンナ伝説に登場する英雄聖騎士様が素敵だったわ)
 大聖女伝説とは、聖女たちが信仰する大聖女アンナの聖女としての人生が書かれた伝記だ。
 大聖女アンナ伝説とも言われる伝記に登場する英雄聖騎士は魔王の胸を聖剣で突き刺して撃退し、魔王に命を狙われていた大聖女アンナを守り抜いて平和をもたらした伝説の英雄だ。
 マリーは聖女だった頃に大聖女アンナ伝説の原本を何度も読み、密かに英雄聖騎士に憧れていた。
 マリーは元聖女になり、教派を変えた今は何でも自由に思っていいとハンナに言われた。
 マリーは勇気を出して思った事を口に出す。
 「世界中が知っている英雄聖騎士様、どんな方かしら。大聖女アンナ様とどんな会話をして、どのように過ごしていたのかな」
 マリーの頭の中に大聖女アンナと英雄聖騎士の疑問が次々と湧いてくる。
 「英雄聖騎士様に会ってみたいな、なんて」
 マリーは疑問の最後に冗談交じりの独り言を呟く。
 何百年も昔の人に会えるわけがない。
 不意に部屋の時計が目に入ると、すでに昼食の時間を過ぎていた。
 「今日は昼食を済ませて買い出しへ行くんだったわ」
 マリーは楽しみにしている事を忘れて、夢中で想像していた事に気づく。
 「それに今日はーー」
 マリーが楽しみにしているジェルブロゼ村の白バラ祭りの初日だ。
 マリーは逸る気持ちを抑えられずに浮き足立つ。
 「そうだわ。お祭りだし、着替えて行こうかな」
 マリーは普段とは違う服装で祭りに行こうと思い、ハンナが譲ってくれた服の中で一番気に入っているコットンの白い素朴なワンピースを選んで着替えた。
 「えへへ。似合ってるかな?」
 マリーは部屋にある姿見の前で嬉しそうに色々な角度から鏡に映る自分を眺める。
 鏡で確認し終えたマリーは白バラ祭りへ行くため、ブラウンのポシェットを肩から下げてリビングへ向かった。
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