聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 「えっと、いま何時? やば、もう行かなきゃ!」
 ヘレナは傾いてきた太陽に気づき、バッグの中にある懐中時計を見て叫ぶ。
 ヘレナはこの後に公演があるため、劇場へ向かわなければならない。
 結局ヘレナは帰るタイミングを見つけられず、ギリギリの時間まで気まずいアフタヌーンティーを過ごしてしまった。
 マリーたち四人は店員や店内の客たちに見送られて店を出た。

 ヘレナは店を出て、やっと解放された安堵の大きな溜め息を吐く。
 「あー、つかれた……」
 ヘレナは心底疲れ切った表情をしている。
 「ヘレナさん、アンナ、また今度ね。ヘレナさんは今度いつ会えるかな? この国にいられる時間は短いから、できるだけヘレナさんに会いたいと思っているんだ」
 ヘレナはレユスットに申し訳なさそうに話す。
 「あ、あの……。申し訳ないんだけど、今は公演の最中だし、歌劇で忙しいからお会いする時間を作るのが難しいの。もしよかったら歌劇を観に来てくれると嬉しいな」
 「分かったよ。客席から応援しているからね」
 レユスットがあっさり引き下がるとヘレナは安堵から明るい笑顔を見せる。
 「ありがとう! いつでもいいから観に来てね」
 「わかったよ、ヘレナさん。またね、アンナ」
 レユスットはマリーとヘレナへ挨拶すると、その場を後にした。
 ヘレナは再び疲れ切った大きな溜め息を吐く。
 「はぁ~、大変だった……。こんなアフタヌーンティーは初めてよ。なんでこうなったんだろ……」
 ヘレナの予定では四人で適当にアフタヌーンティーをして解散するはずだった。
 「大丈夫か?」
 ウィラルドはマリーへ声をかけて心配する。
 「うん、大丈夫よ」
 マリーは心配をかけないようにウィラルドへ答えるが、元気のない声と辛そうな表情は変えられなかった。
 途中、少しマリーの辛さが緩和されたが、長時間トラウマのような相手と一緒にいるのはマリーにとって辛かった。
 ヘレナは二人の様子を見て質問する。
 「マリーちゃんと聖騎士王太子殿下はレユスットさんと知り合いだったみたいだけど、何かあったの? あの人のせいでマリーちゃんは聖女を辞めることになったの?」
 「ごめんなさい、今は話したくないの……」
 辛そうなマリーを見ると、ヘレナは詮索できなかった。
 「あの人が何をしたのか分からないけど、人は見かけによらないって事ね。マリーちゃん、辛いのにあたしに付き合ってくれてありがとう。今度は楽しいお出かけにしよ!」
 マリーは頷いて、夕方前にヘレナと解散した。

 ヘレナはこの後に夜の公演があるため劇場へ向かった。
 マリーとウィラルドは待たせている城の馬車に乗り、王城へ帰る。
< 50 / 133 >

この作品をシェア

pagetop