聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 「……祝わなくていいわ」
 アンナは暗い声で小さく呟く。
 アンナはエドワルドに誕生日を祝ってもらったら、エドワルドとの特別をもっと欲しがってしまいそうになるため自重した。
 「何故だ?」
 アンナの心理を知らずにエドワルドは理由を尋ねると、特に理由を考えていなかったアンナは適当に答える。
 「わたし、忙しいからーー」
 「俺との時間は作れよ」
 「……! だからっ!」
 アンナの顔が一瞬で赤くなる。
 アンナは聖女として忙しいのは事実だが、祝って欲しい気持ちがないような、そっけない答え方をしてしまった。
 断りの言葉を伝えているのに、有無を言わせないエドワルドの言葉にアンナは照れて胸が激しく高揚させている。
 アンナは自分の答え方に落ち込みそうになったが、その気持ちはどこかへ消えてしまった。
 (忙しいと言っているのにーー)
 アンナはエドワルドを紅潮した顔で見上げる。
 アンナは修道女のため、所属している教派の”恋愛や婚姻をせずに生涯を通して神へ祈りを捧げて奉仕する”という決まりを守らなければならない。
 アンナはエドワルドを好きになることはできない、はずだがーー。
 アンナは何か言いたそうな赤い顔でエドワルドを上目遣いで見つめる。
 (なぜ勘違いをしてしまいそうな事を言うの?)
 アンナはエドワルドを心の中で責める。
 本当は祝ってもらいたい。
 その気持ちが大きくなりすぎてアンナから本心が零れ出る。
 「来週の日曜日……、何でもない」
 アンナは零れ出た言葉を言いかけて、やめる。
 エドワルドが「来週の日曜?」と言って繰り返すと、アンナは零れ出そうだった言葉とは違う言葉をエドワルドへ伝える。
 「来週の日曜日も魔物討伐へ行くのかなと思っただけよ」
 アンナはエドワルドから視線をそらし、寂しさを含ませて不満そうに呟く。
 アンナの呟きを聞き、エドワルドはアンナが言いたい事を理解したように閃いた。
 「日曜だから休みだったらいいなとか思ったんだろ」
 エドワルドはアンナが言いたかった事を当てたと思い、得意げな顔をする。
 アンナはエドワルドの言葉と得意げな顔を見ると、不機嫌な表情を作って不満をぶつける。
 「鈍感……!」
 エドワルドはアンナから一方的に批難をされて困惑する。
 本気で機嫌が悪くなっている訳ではないアンナはエドワルドの困っている顔を見て表情を緩める。
 アンナはこの時間が好きだ。
 二人で魔物を討伐している時間も大切に思っているが、討伐を中止してエドワルドと他愛もない会話をして過ごす時間はアンナが一番心が安らいで楽しく幸せと感じる時間だ。

 二人の会話が途切れて沈黙になり、雨音しか聞こえない。
 雨脚は変わらず、雨はまだ止みそうにない。
< 61 / 133 >

この作品をシェア

pagetop