聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 「エドワルド様……!」
 驚いたアンナは一瞬で顔を赤いバラのように真っ赤にして声を上げる。
 アンナはエドワルドの鍛えられた逞しい腕と身体に包まれる。
 アンナはエドワルドのペガサスに乗せてもらっている時も落ちないように、エドワルドに後ろから抱きしめるように支えられている。
 しかしその時の優しく抱きしめられている時とは違う、エドワルドの感情が伝わってくるような力強さにアンナの鼓動が激しくなる。
 「俺が濡れているのを知らなかっただろ」
 エドワルドは真っ直ぐアンナを見つめて、落ち着いた真剣な声で話す。
 アンナは視線が交わると、外せないほど力強いエドワルドの視線を見ないように努めて彼の肩に視線を移す。
 エドワルドのアンナを抱き寄せている腕とは反対側の肩や袖が今も雨に濡れているのが見えた。
 「近いのは我慢しろ。俺が風邪を引いたらアンナのせいだからな」
 エドワルドはアンナから視線を逸らさず真っ直ぐ見つめて意地悪そうに呟くが、その声には優しさがにじみ出ている。
 責めるような言葉を選んだのは、アンナがエドワルドから離れてこの状況を終わらせないためだ。
 アンナは激しい鼓動でまともな思考ができない中、何とか言葉を紡ぐ。
 「わたしは……、エドワルド様が濡れてしまうなのら、わたしが雨に濡れても構わないわ」
 「アンナは自分が風邪を引いて、俺に心労を煩わせたいのか?」
 アンナはエドワルドに顔を近づけられて囁かれる。
 頬が触れそうに近い。
 アンナはエドワルドの頬の体温を感じているような気がする。
 アンナの頬がさらに赤く染まっていく。
 「そういうわけじゃ……」
 何と言葉を返したらいいのか分からなくなったアンナは顔を赤いバラのようにさらに赤く染めたまま口ごもる。
 エドワルドは身動きをせずに、抵抗しないアンナに言葉を続ける。
 「俺はこんなに欲深い人間なんだな。アンナに教えてやりたい」
 エドワルドはアンナの耳元で穏やかな口調で囁く。
 穏やかな口調とは真逆の、次々と湧き上がるアンナへの激しい感情を必死に抑える。
 エドワルドはアンナの肩を抱く腕に抑制の力を入れる。
 力を入れすぎればアンナに苦痛を与えてしまう。
 しかしアンナは力強く肩を抱かれ、それが心地良いと感じている。
 アンナは赤いバラのような顔で真横にあるエドワルドと視線を合わせて穏やかに問う。
 「教えてくれないの?」
 アンナに可愛らしく問われ、エドワルドはアンナを強く見つめる。
 エドワルドにとってアンナの可愛らしい言葉は挑発のように聞こえ、今すぐにでもアンナを奪ってしまいそうになる欲を必死に抑える。
 「嫌われるからやめとく」
 エドワルドはアンナを抱き寄せる腕の力をほんの少しだけ緩める。
 (嫌いになるはずないのにーー)
 アンナはその言葉を残念に思いながらも、愛おしそうに心の中でエドワルドへ呟く。

 アンナは雨が降り続く空を見上げる。
 いつかは雨がやんでしまう。
 アンナは雨を降らす灰色の厚い雲が覆う空をまだ熱を持つ赤いバラの頬で見上げていた。
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