聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 修道院長はエドワルドを信用し、エドワルドとアンナを二人きりにするため、かすかに扉を開けて部屋の外へ出ていった。
 部屋で二人きりになったエドワルドとアンナ。
 エドワルドは弱々しい足取りでベッドに伏せっているアンナに近寄り、震える声でアンナを呼ぶ。
 瞳を閉じているアンナはエドワルドの呼ぶ声に答えない。
 「アンナ……」
 エドワルドはベッド脇の床に座り、アンナの手を両手で優しく握ってもう一度名前を呼ぶとアンナが薄く目を開く。
 美しく輝いていたアンナの黄色い瞳は生気を失いそうに弱々しい。
 「エドワルドさま……」
 アンナはゆっくりとエドワルドの方へ顔を向けて、かすれる声で名前を呼ぶ。
 アンナの声は耳を澄まさないと聞こえないくらい、か細い声だ。
 アンナの顔は青白く、生気を感じさせない。
 エドワルドはアンナを見て悲愴に飲み込まれる。
 「アンナ……」
 エドワルドはアンナの名前を呼び、視線を合わせる。
 エドワルドはアンナの部屋に来るまでに修道院長から聞いた、アンナがこうなってしまった原因と思われる事を思い出す。
 女性聖職者を専門に診る女医が言うには、アンナは自身の生命力を聖女の力に換えて使っていた可能性がある事、聖女の力を仲間の修道女たちへ分け与えて力を使い果たしてしまった事が原因とされた。
 (アンナ……)
 エドワルドはその事実を知り、自分の命より他人を優先するアンナを責めることはできなかった。
 アンナはエドワルドに視線を合わせると、か細い声で話し始める。
 「エドワルドさま……。お見舞いに来てくれたのね。こんな姿でごめんなさい。お医者様が言うには、わたしにはもう生命力も聖女の力も残っていないみたいなの。もっと一緒にいたかったのに……」
 アンナは手の伸ばすと、エドワルドはその手を取って両手で優しく包む。
 「まだ白バラの花言葉を聞いてなかったわね。今年の誕生日の白バラも一緒に見たかった……」
 アンナが続けて何かを言おうとして唇をかすかに動かすと、エドワルドの手からアンナの手が滑り落ちる。
 「アンナ……!」
 エドワルドの頭が一瞬で真っ白になる。
 何も考えられない。
 エドワルドはアンナの手が自分の手の中から滑り落ち、アンナの名前を何度も呼んだ事以外は何も覚えていなかった。
 気づいた時にはエドワルドの目は真っ赤に腫れて声がかすれ、激しい頭痛で頭が割れそうになっていた。
< 73 / 133 >

この作品をシェア

pagetop