く ち な し―身代わりの恋
「そーいえば、ノブの嫁って同じサークルだったアユミだよな?」

これまた美人だったアユの話が出て、俺の中の創作意欲が疼き出す。

「小悪魔っぽかったよな、どんな先生になってるのかな?」

アユもまた教員を目指していて、俺とも仲良かったし、個人的に″ある理由″からアユに親近感を持っていた。

「小悪魔ってか悪魔じゃん? ノブの子供を妊娠したって嘘ついて結婚したんだからさ」

ノブこと、大橋 忠延《ただのぶ》は、アユに出会った事で人生を狂わされた。

「噂で聞いたんだけど、そのアユさ――…」

美男美女の話で盛り上がってる最中、

ブブ!
と、俺のスマホが無遠慮に鳴った。

《理?!》

「姉さん?」

姉の梓からだった。
騒がしい店内から外へ移動して電話を続けた。

「どうしたの?」

《ねぇ、理、今から車で鹿児島に行けない?》

「鹿児島?!」

同じ九州とはいえ気軽に行ける距離ではない。

《事情があって祐介さんのいる鹿児島に行かなきゃいけなくなったの》

俺は時計を見た。

「酒飲んだから運転は無理だよ。それに今からじゃ飛行機も新幹線もないし、朝まで待てないの?」

祐介さんが鹿児島に出張なら秘書が付いてるだろうに。
少しだけ間を置いて、

《そうね。そうする》

姉の低い声が聞こえたあと、電話はプツリと切れた。
胸がざわざわする。

…一体、何があったんだ?
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