く ち な し―身代わりの恋
祐介は、ボォ゙ッと私を見た後、

「……何でお前がいるんだ? 」

珍獣でも見たかのような目つきをし、しかし直ぐに苦い表情に変わった。

不味い粉薬でも口にしたような顔。
それにイラッときた私は、軽く微笑んで答えてやった。


「貴方、部屋の露天風呂で滑ったんでしょ? 」

祐介は目を大きく見開いて、周囲を見回し、

「……あ」

部屋の隅で寝ている愛人を見て、顔色が悪くなった。
私は、構わず努めて冷静に夫を責め続ける。

「電話かかってきたのよ、浮気してたら風呂で頭を打ったって」


 祐介の唇の端が震え始めた。
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