く ち な し―身代わりの恋
そして。

「祐ちゃん! 起きたの?!」

丁度、愛人も目を覚まし、すぐさま祐介の元へ。

「良かったー!死ななくて!」

妻の私が居るのにも関わらず、祐介の身体に抱きついて喜んでいる。

「お、おい……」

動揺した夫は、私の方を気にしながらも嬉しさを隠せずにいた。

「……」

なんて。
馬鹿なんだろ、私。


「何で梓に連絡するんだよ? アホか! 脳天グズ! ちっとは先を考えろ!」

山脇さんに八つ当たりする夫を見ていたら、本当に馬鹿馬鹿しくなった。


「いえ、奥様にご連絡をされたのは、そのお嬢さんで」

ムッとする山脇さんが愛人を見ると、その女は、


「だって、祐ちゃんが死ぬと思って! でも、祐ちゃんは偉い人だから救急車を呼んで浮気バレたらニュースになるし奥さんに何とかして貰おうと思ったの!」

女は、やっぱり私を舐めていた。

祐介は、しがみつく愛人を強引に放すと、

「山脇、(なつめ)を家まで送ってやってくれ」

「え、今からですか?」

「誰かに嗅ぎ付けられたらお仕舞いだろうが、俺もお前も!」


滑稽な ″男″から″議員″の顔に戻り始めた。
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