く ち な し―身代わりの恋
病室に二人きりになると、今度は、

「あの子はホステスなんだ。鹿児島に行った事無いっていうから今日だけ、ついでに同行させた」

祐介は、薄っぺらい ″夫 ″の言葉を吐き始めた。

「″今日だけ ″?」

私の緩まない固い顔に、祐介は目を背けて 、

「遊びだよ、わかるだろ。主婦の梓には分からないだろうが、働く男には捌け口が必要なんだ」

身勝手な言い訳を続けた。
弁護士で政治に目覚め、野心を燃やす夫。
妻としての役割は、正直大変だし、面倒臭かったけれど、尊敬していたから続けてこられた。

それなのに。
今のこの人には何の魅力も感じない。


――″世間体か ″

目を閉じて、大橋の冷たい横顔と言葉を思い出しながら、私は深く息をついた。


「離婚……してください」
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