く ち な し―身代わりの恋
しかし、戻ってはみたものの――

何やら自宅近辺が騒がしい。

塀門の前に何人か集まっていた。

嫌な予感がして、車を裏に停めてから、そっと近寄る。
家の前に居たのは、服部さんを始めとする商店街の人達だった。
きっと、不倫騒動を知って来たんだ。

「居ねーな、逃げたかな」

「嫁はいるだろ? 税金使ってゴロゴロしてるだけなんだから!」

「あんな男のせいで商店街が窮地に追い込まれるなんて許せん!」

皆、怒っている。
というか、寧ろ、弱味を見つけて生き生きしているようにも見える。

どうしよう、家に入れない。
躊躇っていると、

「服部さん! それはやり過ぎだよ!」

周りが止めているのに、服部さんはズボンを下ろして塀に小便をかけ始めた。

「構うもんか! どーせアイツらは居なくなる! あの嫁はドMだからこういう仕打ちを喜ぶに決まってる!」

根拠のない酷い屈辱だ。
流石に腹が立ち、中に入って割る。

「いい加減にしてください!」
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