く ち な し―身代わりの恋
「おっ!不倫議員の奥さんがお帰りだぞ」

男ばかりいて(ひる)みそうになったけれど、汚された門塀を見たら黙ってはいられなかった。

「これは軽犯罪ですよ!」

服部を思い切り睨むが、

「は?! 税金を不正に使った癖に何ぬかしてんだ?!」

「!?」

突如、まだ仕舞っていない下半身を私の方に向けた。

「旦那が元弁護士だからって偉そうにすんな! こんなんで検挙されるかよ!」

私を見る男達の間に、異様な空気が生まれていた。
誰も服部の暴言を咎めようとはしない。

「旦那に相手にされないから見たかったんだろう?」

それどころか、ニヤニヤと笑って一緒にからかい始める始末。

「俺が相手してやろうか?」「ちょ……」

肩を掴む服部から逃げようとした時だった。


――カシャ!

嫌なシャッター音が背後から聞こえた。

「それ、公然猥褻罪な」

ドスの効いた低い声。
レンズから視線を外した顔は恐ろしいほど冷ややかだ。
スマホのシャッターを切っていたのは、大橋だった。

再びスマホを服部のむき出しの下半身に向ける。

「こんなもん撮って変態かっ……?!」

服部が慌てて下半身を仕舞う。

「どう見たってお前の方が変態だろうが。その変態面をネットで拡散してやろうか?」

「ネット?!」

男達は、数人で何かを耳打ちし合い、マズイと思ったのか、服部を先頭にゾロゾロとその場から立ち去っていった。
< 141 / 156 >

この作品をシェア

pagetop