く ち な し―身代わりの恋
* * *

弟の理は、滅多に会えない楓には甘い。
毎年、クリスマスと誕生日には必ずプレゼントを送ってきてくれる。
というか。 私も誕生日なんだけど。


――午後六時。
買ってきたバースデイケーキに蝋燭を立てていると、ピンポンと呼鈴が鳴った。

「宅配便だっ! プレゼントだっ!」

楓が玄関に走り寄っていく。

「あっ! 楓! 勝手にドア開けないで!」

私達が住んでいるのは、軽犯罪が多いと言われる街。
母子二人。
防犯設備不十分なアパート住まい。
気を付けたいのに、楓が玄関のドアを開けてしまった。
すると、配達員のような元気な挨拶ではなく、

「こんばんは」

穏やかで低い声が聞こえてきた。

「おじさん、宅配の人?」

「違うよ」

聞き覚えのある声だった。

「お母さん、知らない人が来た」

がっかりした楓が私の後ろに隠れ、訪問者をジッと見つめている。
私に似て、少し人見知りな所がある娘。

ううん。

もしかしたら。

「……久しぶり、梓」

この人にも似てるのかもしれない。

「……どうして?」

「理から誕生日だって聞いて。梓と……娘の」


お祝いに大橋がやって来た。
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