く ち な し―身代わりの恋
「ヒドイ顔……」

翌朝。鏡を見ながら思わず呟いた。
若くもないし、手入れもせずに睡眠不足となれば、朝の肌は直ぐにボロボロになる。

″恋愛がしたい″

大橋の言葉を思い出して、笑ってしまった。

――どうかしてる。あの人。

流されるように 条件を受け入れたものの、大橋がかなりイカれた男だったらどうするの?
本当に良かったの?
警察に今からでも電話した方が良くない?

……とはいっても。
こういう事を相談できる相手がいない。
正確に言うと、夫が議員になってから女友達にプライベートな話を出来なくなった。


「女はどんなに仲良くても裏切る、すぐに喋る。政治に関わる事も家での事も話すな」

当選した時に夫が私に言った。

そうだ。あの子なら。
スマホを手に取り、弟の理に電話をかけようとして「……」止めた。

まだ朝の6時だ。
作家を名乗りつつも、実際はニートと変わらない生活、今は寝ているだろうし、何より――
今、車はあの男が持っている。
手元に帰ってくる迄は様子を見よう。

私は、顔を洗って朝食の準備に取りかかった。
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