く ち な し―身代わりの恋
「……何?」

「え」

「時々、そうやって俺の事、睨むよね?」

私の視線に気が付いた大橋が、コップを静かに置く。

「……睨むなんて」

睨んでいたかもしれないけど。

「俺の事、怖い?」

大橋の冷たい指が、再び私の手を掴んだ。
目が、笑ってなかった。

「……い、え。そうじゃないけど」

怖いに決まってる。
掴まれた手を振りほどこうとしたら、逆に力を入れられた。

「……ちょ」

ハッとして大橋の顔を見た途端、そのまま引き寄せられ、倒れる様に隣に座ってしまう。
< 31 / 82 >

この作品をシェア

pagetop