く ち な し―身代わりの恋
それなら連絡すればいいのに。
私の不満を悟ったのか、

「電話する時間も惜しかった、これでも飛ばしたんだ」

大橋は申し訳なさそうに言った。
サングラスをかけているので、イマイチ表情が読めないけれど。

「こっちに」

大橋は自分の車に乗るように手招きした。

「ここ、車、置いていて大丈夫な所?」

「あぁ」

警戒心は随分薄れたとはいえ、よく知らない男の車の隣は、やはり緊張した。

それにしても、男って眼鏡やサングラスで変装するの好きね。
知ってる人が見たら何の効果も無いのに。
それともかっこつけたいの?

運転する大橋の横顔を見ていると、

「また、そんな目で見る」

大橋の左手が私の膝を掴んで、ドキッとした。

「言いたい事あったら俺には言って。今日の服装みたいに自然体でいいから」

「……え」

大橋は、膝に置いていた手を頬に移動させると軽く触れてきた。

「じゃないと、俺が強引に本当の貴女を引っ張りだすよ」
< 41 / 82 >

この作品をシェア

pagetop