く ち な し―身代わりの恋
「和食は好き?」

「ええ」

答えながら、和風ながらモダンな店を見上げる。
行く行かないは別として、県内のお洒落な飲食店は大体把握してるつもりだったのに。

「ここは、先月オープンしたばっかりなんだ。目立つ看板も立てないし、宣伝もしない。お客さんの口コミだけで客を呼ぶんだって」

説明する大橋を見る。
この人、何で私の思ってる事分かっちゃうの?


「お待たせしましたー、親子丼定食と鴨南蛮そばです」

頼んだ料理が来て、その黒い器の品の良さにも目がいった。

「料理が美味しそうに見える」

「そうね」

実際、初めの一口がとても美味しかった。

「それだけで足りるの?」

鴨南蛮そばを食べる私を大橋が不思議そうに見た。

「専業主婦のお昼なんて、いつも質素なものだから」

本当にそう。
給与は少なくないけれど、政治家というのはお金もかかるので浪費はできない。
見えない所は節約しないとやっていけないもの。

「そうなんだ」

「そうよ、あなたの奥さんは専業主婦?」

つい流れで大橋の事を聞いてしまった。

大橋は、「そう」 と呟き、

「寝てばっかりのダメな嫁だよ」

と続けて言った。
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