く ち な し―身代わりの恋
《シンポジウムの後に急遽、農地の視察になったから戻りが遅れる》
夫から連絡があったのは、商店街との会合の前日だった。
いつものように、
《梓が出てくれ。ただ、意見をまとめて記しておいてくれればいい》
軽く私に代理を頼んできた。
商店街との会合は、小学校の運動会とは違い、座っているだけでは済まないので余計に気が進まない。
おまけに、市や県の意向と商店街との間には埋まらない大きな溝があった。
しかし、それでも自分の役目だと割り切るしかない。
その夜、私は、前回までの意見交換の資料を見て会合に備えていた。