く ち な し―身代わりの恋
静かになった部屋で布巾を吐き出した。
込み上げてくるものを抑えながら、下着をつけてふらふらと玄関へと向かう。

「いつのまに……」

内鍵はかけたつもりはないのに。
あの男が隙を見てかけたのか。

「……ちょっと待ってて」

叩かれた頬を隠すようにしてドアを開けた。
そして、驚いた。

「庭から出ていった奴、誰?」

家に来たのは、夫の祐介ではなく大橋だったから。

「……なんで、ここに?」

こんな夜に突然タイミング良く現れた大橋は、少しバツが悪そうに私を見ている。

「俺、一応、板垣祐介の活動報告に目を通してるから。宮崎に行ってるんだろ? 更新して書いてあった」

「……そうだけど」

私は、ずっとブログは更新してないから、珍しく祐介が自分で延期の旨を書いたのか。

浮気を疑われない為に?
だとしたら、あざとい。

けれど、それで助かった。
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