く ち な し―身代わりの恋
このまま、がいい。
たとえ、祐介が浮気しても、私に愛情がなくても…、商店街の人たちに嫌われても……。
このまま、何もかも満たされないままでも――

――本当に?

それで、やり過ごすの?

何ヵ月?
何年?
その間に、私はどうにかなってしまわない?
この人と浮気をしていようとも、気持ちは保てる?


「……今日はゴメン、もう少しで約束を破るところだった」

唇を離した大橋が、私の髪を触りながら謝ってきた。
謝られると余計に現実に引き戻される。

「誰にも話さない代わりに、純な恋愛をしたいなんて脅したのにな」

私と大橋は、交換条件で付き合ってるだけなのに。

「火曜日、楽しみにしてる」

別れ際、大橋はそう言った。
特に周りを警戒するでもなく、何食わぬ顔で玄関を出ていく。
既婚者なのに、バレたらどうしよう? と、思わないのだろうか?

やっぱり、少し変わった人だ。
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