く ち な し―身代わりの恋
「ねぇ! 祐介さん!開けて!」

確か中からはダメでも外からは開けられるようになっていたはず。

「扉が壊れて開かないの!」

リビングまで聞こえてるはずの私の声に、夫の反応は無い。

「ねぇ!」

扉を激しく叩いてみても、聞こえてくるのはTVの音と、酔っ払い特有の豪快なイビキだけ。

「……寝ちゃったの?」


何とか壊してでも開けようとしたけれど、動くのは扉の上半分のみで下がびくともしない。

「どうしよう」

夏場とはいえ、濡れた身体のまま浴室にいるのはツラい。
まさか、このまま朝まで過ごすの?

「ッ…クシュ」

何だか寒気までしてきたし。
もう、本当についてない。
仕方がないのでお湯を張って浸かり、朝まで待つことに。
冷めては追い焚きし、浴槽の中で 何度も気絶したように眠った。
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