レッドパンダ・ブレイク ※本格・長編ファンタジー戦記、一括掲載

序詩

 球形の惑星は火と闇に沈んで、平坦な大地(プレート)がいくつも浮かんでいる。
 おのおののプレートは球面の上空で浮かびながら、ほんの少しずつ移動していく。
 約四十のプレートの中には小島(プラネット)を持つものもある。
 そしてこの世界には元素(エレメント)と技法(テクネー)の魔法がある。
 それから人間と人間の他の種族がいろんなやり方で共存している。

 だから彼、ブレイク・ハートは小柄な獣の姿をしている。
 アライグマを赤くモデルチェンジしたような、レッサーパンダ。
 火の元素を熟知した、燃え立つ毛並みのレッドパンダ。
 彼はアップルパイが大好物。
 木目ある美肌の相棒はパンプキンパイがお好みらしい。
 空飛ぶ快速艇の上、並んでパイをかじっている。

 ファンタジックな世界がノスタルジックにやさしいだなんて、誰が決めたんだろう?
 いったい、ぱっと見た目だけで中身なんてわかるものだろうか?
 きみ、それは偏見と固定観念だよ。
 能天気なふりをしていたって、それなりに悩みがないわけじゃない。
 タダ同然とみなされる自由や平等だって、気づかないうちに代価はとられている。
 誰にだって、背負わされている事情がある。
 何事につけたって、明と暗の両面があるものだ。

 彼らには彼らの事情がある。
 どんな世界にもその世界のゆがみがある。
 ゆえに尻に火がついたネズミ花火よろしく。
 七転八倒の活劇をやらかすより他はないのだ。
< 1 / 55 >

この作品をシェア

pagetop