振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。
「次、サメ見に行こっか。」
「うん。」
立ち上がろうとしたとき、ふいに光くんが私の手を引いた。
「澪ちゃん。」
「……?」
「こっちから行こう。」
「え?」
そのまま連れていかれたのは、少し人の少ない窓際だった。
大きな水槽の向こうを、ゆったりと魚が泳いでいる。
「ここ、俺静かで好きなんだ。」
「うん……。」
「なんか、落ち着く。」
「私も。」
そう答えると、光くんは少しだけ安心したように笑った。
「よかった。」
「……?」
「澪ちゃんが、こういう場所でもちゃんと笑ってくれるの。」
「嬉しい。」
その言葉に、私は何も言えなくなる。
ただ、繋いだ手の温かさだけが、やけに鮮明だった。