振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。
「澪ちゃん」
「はい」
呼ばれるだけで心臓が動く。
光くんは窓の外を見ながら続けた。
「今日も、来てくれてありがとう」
その一言が、まっすぐ胸に落ちる。
「……光くんが誘ってくれるお陰です」
そう返すのが精一杯だった。
光くんは少しだけ安心したように笑う。
「そっか」
それだけ。
それだけなのに、胸が少し軽くなる。
電車が揺れるたびに、肩が少し触れる。
そのたびに、心臓が変な音を立てる。
(これ……今日ずっと続くのかな)
そんなことを思っているうちに。
窓の外の景色が少しずつ変わっていく。
まだ何も始まっていないのに。
もうすでに、胸の中は落ち着かなかった。