『身代わり結婚』いただきます!不浄の辺境伯様は、どうやら私の◯◯がお気に召した御様子です。
辺境で愛を叫ぶ
片手で髪束をざっくりとつかみ取り、崩れないようにきつくねじって丸めていく。
大粒魔石の簪そっと優しく差し込んで、ひねりながらもう一度突き刺し固定する。
(……ようし、完璧!)
髪は全部は束ねず、半分だけまとめて残りは肩に垂らしてみた。
鏡の前で左右に首をひねって出来栄えを確認し、後ろはソニアさんに頼んで見てもらう。
「とてもいいわ、ベルさん。……さ、立ってわたしに全身を見せてちょうだい」
どうやら及第点をもらえたみたい。
ほっと安堵して化粧台から立ち上がり、ソニアさんに見せつけるようにその場で一回転してみせた。
花柄のドレスの裾がふんわりと軽やかに広がって、いつも無表情なソニアさんが顔をほころばせる。
「晴れ着じゃない婚約披露パーティなんて、最初はどうかと案じていたけれど。なかなか華やかに仕上がったのじゃない?」
せっかく披露目の式をするというのに、新しいドレスを仕立てないだなんてあり得ない。もっと入念な準備を行うべきだ。
当初はそう言って反対したソニアさんだったが、アレクシス様と二人がかりで説得したら折れてくれた。
「えへへ、ありがとうございます。マリアベルお嬢様たちが帰郷するまでに間に合わせようと思ったら、準備に時間を掛けるわけにはいかなかったから。それに私も格式張ったパーティより、気楽に皆さんに祝ってもらえる式の方が嬉しいですし」
それにそれに、ほぼ着の身着のまま状態で辺境に来たマリアベルお嬢様たちに、正式な礼服など準備できるはずもなく。
結果として屋敷の使用人の皆さんや、辺境騎士団の面々を招待しての内輪の会となったのだ。
諸事情あって実際に私たちが結婚するまではまだ日がかかるし、一つの区切りとしてはこれで充分だと思う。
「契約を交わしておきながら一方的にマリアベル嬢を拒絶した『不浄の辺境伯』と、辺境でわがまま放題に振る舞って実家に戻されたマリアベル嬢。世間はどっちもどっちだと思うでしょうね?」
身も蓋もないソニアさんの言葉に、私は苦笑してしまう。
「双方痛み分けって感じですよね。でもこっちが心配するほど、二人は気にしてない感じだけど――……あ」
バタンッ、と突然ノックもせずに扉が開け放たれる。
転がるように飛び込んできたマリアベルお嬢様と、お嬢様を止めようと手を伸ばすアレクシス様だ。私は笑って二人を出迎えた。
「そろそろ時間ですか? 見ての通り、私の準備はもうばっちりですよ。……どうです、似合いますか?」
肩に掛かった淡い金髪を払い、さりげなく後ろを向いて大粒魔石の簪を二人に見せつける。
マリアベルお嬢様が息を呑み、私に駆け寄った。
「すごいわ、ベル! とっても素敵よ。……一応、『不浄の辺境伯』にもセンスはあったってわけね?」
「ふん。妻に関することで俺は決して妥協しない」
ふんぞり返って宣言すると、アレクシス様が私の髪を一房つまんだ。そうしてそっと顔を近づける。
好意を隠そうともしないその熱い眼差しに、いまだ私は慣れずはにかんでしまう。
てれてれと相好を崩していたら、マリアベルお嬢様が柳眉を逆立てた。
「ちょっとッ! わたくしの大事な妹に気安く触れないでいただける!?」
「……は?」
お嬢様の言い草に、一瞬あっけに取られたアレクシス様が目を吊り上げる。
「ベルは俺の妻だが!?」
「まだ結婚していないでしょ! わたくしの妹よっ!」
「遅くとも来年には結婚している! 俺の未来の妻だ!!」
ああ、また始まった。
やかましく口論を始める二人を横目に、姿鏡で全身を最終確認。
ソニアさんから豪華なオレンジの花束を受け取ってから、ぜえはあと息を荒らげる夫と姉を笑顔で振り返る。
「さ、そろそろ行きましょう? アレクシス様、エスコートをお願いします」
「ま、任せろ!」
いそいそと差し伸べられた腕を取り、婚約披露パーティの会場である辺境伯邸の庭へと向かう。
さすがにマリアベルお嬢様も口をつぐみ、ソニアさんと一緒に静かに後ろを付いてくる。
庭へと続く扉で待機していたメイドさんが、私たちの姿を見て大きく扉を開け放った。
その瞬間、わああっ、と爆発的な歓声に包まれる。
大粒魔石の簪そっと優しく差し込んで、ひねりながらもう一度突き刺し固定する。
(……ようし、完璧!)
髪は全部は束ねず、半分だけまとめて残りは肩に垂らしてみた。
鏡の前で左右に首をひねって出来栄えを確認し、後ろはソニアさんに頼んで見てもらう。
「とてもいいわ、ベルさん。……さ、立ってわたしに全身を見せてちょうだい」
どうやら及第点をもらえたみたい。
ほっと安堵して化粧台から立ち上がり、ソニアさんに見せつけるようにその場で一回転してみせた。
花柄のドレスの裾がふんわりと軽やかに広がって、いつも無表情なソニアさんが顔をほころばせる。
「晴れ着じゃない婚約披露パーティなんて、最初はどうかと案じていたけれど。なかなか華やかに仕上がったのじゃない?」
せっかく披露目の式をするというのに、新しいドレスを仕立てないだなんてあり得ない。もっと入念な準備を行うべきだ。
当初はそう言って反対したソニアさんだったが、アレクシス様と二人がかりで説得したら折れてくれた。
「えへへ、ありがとうございます。マリアベルお嬢様たちが帰郷するまでに間に合わせようと思ったら、準備に時間を掛けるわけにはいかなかったから。それに私も格式張ったパーティより、気楽に皆さんに祝ってもらえる式の方が嬉しいですし」
それにそれに、ほぼ着の身着のまま状態で辺境に来たマリアベルお嬢様たちに、正式な礼服など準備できるはずもなく。
結果として屋敷の使用人の皆さんや、辺境騎士団の面々を招待しての内輪の会となったのだ。
諸事情あって実際に私たちが結婚するまではまだ日がかかるし、一つの区切りとしてはこれで充分だと思う。
「契約を交わしておきながら一方的にマリアベル嬢を拒絶した『不浄の辺境伯』と、辺境でわがまま放題に振る舞って実家に戻されたマリアベル嬢。世間はどっちもどっちだと思うでしょうね?」
身も蓋もないソニアさんの言葉に、私は苦笑してしまう。
「双方痛み分けって感じですよね。でもこっちが心配するほど、二人は気にしてない感じだけど――……あ」
バタンッ、と突然ノックもせずに扉が開け放たれる。
転がるように飛び込んできたマリアベルお嬢様と、お嬢様を止めようと手を伸ばすアレクシス様だ。私は笑って二人を出迎えた。
「そろそろ時間ですか? 見ての通り、私の準備はもうばっちりですよ。……どうです、似合いますか?」
肩に掛かった淡い金髪を払い、さりげなく後ろを向いて大粒魔石の簪を二人に見せつける。
マリアベルお嬢様が息を呑み、私に駆け寄った。
「すごいわ、ベル! とっても素敵よ。……一応、『不浄の辺境伯』にもセンスはあったってわけね?」
「ふん。妻に関することで俺は決して妥協しない」
ふんぞり返って宣言すると、アレクシス様が私の髪を一房つまんだ。そうしてそっと顔を近づける。
好意を隠そうともしないその熱い眼差しに、いまだ私は慣れずはにかんでしまう。
てれてれと相好を崩していたら、マリアベルお嬢様が柳眉を逆立てた。
「ちょっとッ! わたくしの大事な妹に気安く触れないでいただける!?」
「……は?」
お嬢様の言い草に、一瞬あっけに取られたアレクシス様が目を吊り上げる。
「ベルは俺の妻だが!?」
「まだ結婚していないでしょ! わたくしの妹よっ!」
「遅くとも来年には結婚している! 俺の未来の妻だ!!」
ああ、また始まった。
やかましく口論を始める二人を横目に、姿鏡で全身を最終確認。
ソニアさんから豪華なオレンジの花束を受け取ってから、ぜえはあと息を荒らげる夫と姉を笑顔で振り返る。
「さ、そろそろ行きましょう? アレクシス様、エスコートをお願いします」
「ま、任せろ!」
いそいそと差し伸べられた腕を取り、婚約披露パーティの会場である辺境伯邸の庭へと向かう。
さすがにマリアベルお嬢様も口をつぐみ、ソニアさんと一緒に静かに後ろを付いてくる。
庭へと続く扉で待機していたメイドさんが、私たちの姿を見て大きく扉を開け放った。
その瞬間、わああっ、と爆発的な歓声に包まれる。