この恋が、すべてのはじまり。〜学校一の美女が毎日のようにいじめてくる地味子は、彼女が崇拝する神インフルエンサーです〜
最終話:神の降臨と、終わらないツッコミ
南くんの真っ直ぐな告白に、私の胸は甘く激しく締め付けられた。
「……南くん。ありがとう。私、南くんのことがずっと好きだった」
「如月さん……!」
南くんの顔がパッと明るくなる。私は眼鏡を少し押し上げ、悪戯っぽく微笑んだ。
「でもね、私の本当の姿を、あさっての創立記念パーティーで全部見せる。それを見て、もし幻滅しなかったら……その時は、私と付き合ってください」
「幻滅なんてするわけないよ。分かった、当日を楽しみにしてる」
南くんと約束を交わし、私は最後のリベンジの準備に取りかかった。
ターゲットはもちろん、フラれて絶望の底にいるあなゆきだ。
彼女をただネットで叩くだけでは生ぬるい。
彼女が崇拝する「神」の正体が私だと知った時、どんな顔をするのか。それをリアルタイムで全世界に届けるのだ。
そして迎えた、創立記念パーティー当日。
きらびやかなライトが照らす学園の大ホール。
生徒たちがドレスやタキシード姿で談笑する中、あなゆきは取り巻き三人衆(麗奈、美羽、愛菜)を連れて、完全に意気消沈していた。
南くんにフラれ、大好きなインフルエンサー「葵。」からは『いじめっ子には社会的制裁を下す』と脅されているのだから、精神はもうボロボロだ。
「はぁ……もう最悪。南くんにはフラれるし、葵。様には嫌われそうだし……。あの地味子の如月さえいなければ……!」
あなゆきが小声で呪詛を吐いた、その時だった。
ホールの照明が突然、暗転した。
ステージ上の巨大スクリーンに、見覚えのあるロゴが浮かび上がる。
【 葵。 @aoi_official LIVE START 】
「えっ……!? 葵。ちゃんのライブ配信!?」
あなゆきが弾かれたようにスマホを開く。
同時に、ステージのスピーカーから、加工されていない、けれど聞き覚えのある凜とした声が響き渡った。
『世界中のみんな、こんばんは。「葵。」です。今日はね、私の大好きな友達が通う学校の、創立記念パーティーに極秘で来ちゃいました!』
ドッと湧き上がるホール。生徒たちが「え!? この学校に葵。ちゃんが来てるの!?」と騒ぎ出す。
スクリーンには、今まさにこのホールの舞台裏から撮影されているリアルタイムの映像が流れていた。
「嘘……っ、葵。ちゃんがここにいるの!?」
あなゆきが目を輝かせ、ステージを見つめる。
『そして今日、この場所で、私を毎日ネットで応援してくれた【ある女の子】に、直接お礼を言いに来ました。文珠史郎 亜奈柚樹さん、そこにいるよね?』
「ひっ……!?」
あなゆきの顔から一気に血の気が引いた。スポットライトが、ホールの中央に立つあなゆきをピンポイントで照らし出す。
『あなゆきさん、私を「神」って呼んでくれてありがとう。でも……私の友達の教科書を破いたり、ノートを引き裂いたり、毎日「ブス」「生きてて恥ずかしくないの?」って罵倒してたのは、あなただよね?』
世界中の1億人が見守る配信画面に、あなゆきの引きつった顔がドアップで映し出される。
コメント欄は一瞬で「こいつがいじめ犯か!」「最低!」「顔だけ美人の悪魔!」という非難の声で埋め尽くされた。
「違う……私は……っ! あ、 葵。様、誤解なの! 私はただ……!」
あなゆきがステージに向かって悲鳴のような声を上げた。
その時、ステージの幕が、ゆっくりと上がった。
そこに立っていたのは、いつものボサボサ髪でも、分厚い眼鏡でもない。
艶やかな黒髪をなびかせ、最高級のドレスを身にまとった、誰もが見惚れる圧倒的な美少女。
それはまぎれもなく、世界に君臨するトップインフルエンサーの『葵。』であり——。
「う、嘘……でしょ……?」
あなゆきがへたり込み、腰を抜かした。
そこにいたのは、彼女が毎日ゴミのようにいじめていた、地味子の如月葵だった。
葵(私)はステージの上から、マイクを通して、あなゆきへ極上の笑みを向けた。
「同じ名前なのにブス、だっけ? あなゆきさん、毎日『鏡の私』を崇めながら、目の前の私をいじめてる姿、本当に面白かったよ」
(いやー、マジで歴史に残るレベルのコントだったよ。一生分のブーメラン芸を見せてくれてありがとうね!)
心の中のキレ味抜群のツッコミを、今度はその瞳の光だけで叩きつける。
「あ、あ、あああ……っ!」
自分がどれほど致命的な過ちを犯したかを理解したあなゆきは、顔を覆ってその場に泣き崩れた。取り巻きの三人衆も、巻き添えを食らうのを恐れてクモの子を散らすように逃げていく。
あなゆきのSNSアカウントは、この瞬間から世界中のフォロワーによる通報と炎上で、文字通り「社会的な死」を迎えることとなった。
完璧な、そして徹底的なリベンジの完了だった。
パチ、パチ、パチ。
静まり返ったホールの中で、優しく、力強い拍手が響いた。
振り返ると、ステージの袖から南くんが歩いてきていた。
彼はドレス姿の私を見て、一瞬だけ目を見開いたけれど、すぐにいつもの、あの優しい笑顔を浮かべた。
「びっくりした。まさか如月さんが、あの『葵。』ちゃんだったなんてね」
南くんは私の前に立ち、そっと手を差し伸べた。
「でも、確信したよ。俺が好きになったのは、眼鏡の君でも、ドレスを着た君でもない。如月葵っていう、君自身だ。……俺と、付き合ってくれますか?」
1億人のフォロワーの前での、最高のプロポーズ。
私はスマホの配信をそっと切り、彼の温かい手をギュッと握りしめた。
「はい! よろしくお願いします、南くん!」
その後。
あなゆきは学校にいられなくなり、ひっそりと転校していった。取り巻きたちも完全に大人しくなり、学園には平和が戻った。
私はというと相変わらず、学校では普通の「地味子」として静かに過ごしている。たまに、隣の席の彼氏(南くん)が、私の分厚い眼鏡を悪戯っぽく外して「今日も可愛いね」なんて囁いてくるのが、最高に甘酸っぱくて困るけれど。
スマホを開けば、今日も1億人のファンが私を待っている。
でも、今の私には、リアルな世界で私だけを見てくれる、最高の王子様がいるのだ。
(まあ、南くんがイケメンすぎて、今度は私が嫉妬で爆発しそうなんだけどね!)
心の中でいつものようにツッコミを入れながら、私は大好きな彼の隣で、新しく始まった幸せな毎日に、最高の「いいね」を教えるのだった。
「……南くん。ありがとう。私、南くんのことがずっと好きだった」
「如月さん……!」
南くんの顔がパッと明るくなる。私は眼鏡を少し押し上げ、悪戯っぽく微笑んだ。
「でもね、私の本当の姿を、あさっての創立記念パーティーで全部見せる。それを見て、もし幻滅しなかったら……その時は、私と付き合ってください」
「幻滅なんてするわけないよ。分かった、当日を楽しみにしてる」
南くんと約束を交わし、私は最後のリベンジの準備に取りかかった。
ターゲットはもちろん、フラれて絶望の底にいるあなゆきだ。
彼女をただネットで叩くだけでは生ぬるい。
彼女が崇拝する「神」の正体が私だと知った時、どんな顔をするのか。それをリアルタイムで全世界に届けるのだ。
そして迎えた、創立記念パーティー当日。
きらびやかなライトが照らす学園の大ホール。
生徒たちがドレスやタキシード姿で談笑する中、あなゆきは取り巻き三人衆(麗奈、美羽、愛菜)を連れて、完全に意気消沈していた。
南くんにフラれ、大好きなインフルエンサー「葵。」からは『いじめっ子には社会的制裁を下す』と脅されているのだから、精神はもうボロボロだ。
「はぁ……もう最悪。南くんにはフラれるし、葵。様には嫌われそうだし……。あの地味子の如月さえいなければ……!」
あなゆきが小声で呪詛を吐いた、その時だった。
ホールの照明が突然、暗転した。
ステージ上の巨大スクリーンに、見覚えのあるロゴが浮かび上がる。
【 葵。 @aoi_official LIVE START 】
「えっ……!? 葵。ちゃんのライブ配信!?」
あなゆきが弾かれたようにスマホを開く。
同時に、ステージのスピーカーから、加工されていない、けれど聞き覚えのある凜とした声が響き渡った。
『世界中のみんな、こんばんは。「葵。」です。今日はね、私の大好きな友達が通う学校の、創立記念パーティーに極秘で来ちゃいました!』
ドッと湧き上がるホール。生徒たちが「え!? この学校に葵。ちゃんが来てるの!?」と騒ぎ出す。
スクリーンには、今まさにこのホールの舞台裏から撮影されているリアルタイムの映像が流れていた。
「嘘……っ、葵。ちゃんがここにいるの!?」
あなゆきが目を輝かせ、ステージを見つめる。
『そして今日、この場所で、私を毎日ネットで応援してくれた【ある女の子】に、直接お礼を言いに来ました。文珠史郎 亜奈柚樹さん、そこにいるよね?』
「ひっ……!?」
あなゆきの顔から一気に血の気が引いた。スポットライトが、ホールの中央に立つあなゆきをピンポイントで照らし出す。
『あなゆきさん、私を「神」って呼んでくれてありがとう。でも……私の友達の教科書を破いたり、ノートを引き裂いたり、毎日「ブス」「生きてて恥ずかしくないの?」って罵倒してたのは、あなただよね?』
世界中の1億人が見守る配信画面に、あなゆきの引きつった顔がドアップで映し出される。
コメント欄は一瞬で「こいつがいじめ犯か!」「最低!」「顔だけ美人の悪魔!」という非難の声で埋め尽くされた。
「違う……私は……っ! あ、 葵。様、誤解なの! 私はただ……!」
あなゆきがステージに向かって悲鳴のような声を上げた。
その時、ステージの幕が、ゆっくりと上がった。
そこに立っていたのは、いつものボサボサ髪でも、分厚い眼鏡でもない。
艶やかな黒髪をなびかせ、最高級のドレスを身にまとった、誰もが見惚れる圧倒的な美少女。
それはまぎれもなく、世界に君臨するトップインフルエンサーの『葵。』であり——。
「う、嘘……でしょ……?」
あなゆきがへたり込み、腰を抜かした。
そこにいたのは、彼女が毎日ゴミのようにいじめていた、地味子の如月葵だった。
葵(私)はステージの上から、マイクを通して、あなゆきへ極上の笑みを向けた。
「同じ名前なのにブス、だっけ? あなゆきさん、毎日『鏡の私』を崇めながら、目の前の私をいじめてる姿、本当に面白かったよ」
(いやー、マジで歴史に残るレベルのコントだったよ。一生分のブーメラン芸を見せてくれてありがとうね!)
心の中のキレ味抜群のツッコミを、今度はその瞳の光だけで叩きつける。
「あ、あ、あああ……っ!」
自分がどれほど致命的な過ちを犯したかを理解したあなゆきは、顔を覆ってその場に泣き崩れた。取り巻きの三人衆も、巻き添えを食らうのを恐れてクモの子を散らすように逃げていく。
あなゆきのSNSアカウントは、この瞬間から世界中のフォロワーによる通報と炎上で、文字通り「社会的な死」を迎えることとなった。
完璧な、そして徹底的なリベンジの完了だった。
パチ、パチ、パチ。
静まり返ったホールの中で、優しく、力強い拍手が響いた。
振り返ると、ステージの袖から南くんが歩いてきていた。
彼はドレス姿の私を見て、一瞬だけ目を見開いたけれど、すぐにいつもの、あの優しい笑顔を浮かべた。
「びっくりした。まさか如月さんが、あの『葵。』ちゃんだったなんてね」
南くんは私の前に立ち、そっと手を差し伸べた。
「でも、確信したよ。俺が好きになったのは、眼鏡の君でも、ドレスを着た君でもない。如月葵っていう、君自身だ。……俺と、付き合ってくれますか?」
1億人のフォロワーの前での、最高のプロポーズ。
私はスマホの配信をそっと切り、彼の温かい手をギュッと握りしめた。
「はい! よろしくお願いします、南くん!」
その後。
あなゆきは学校にいられなくなり、ひっそりと転校していった。取り巻きたちも完全に大人しくなり、学園には平和が戻った。
私はというと相変わらず、学校では普通の「地味子」として静かに過ごしている。たまに、隣の席の彼氏(南くん)が、私の分厚い眼鏡を悪戯っぽく外して「今日も可愛いね」なんて囁いてくるのが、最高に甘酸っぱくて困るけれど。
スマホを開けば、今日も1億人のファンが私を待っている。
でも、今の私には、リアルな世界で私だけを見てくれる、最高の王子様がいるのだ。
(まあ、南くんがイケメンすぎて、今度は私が嫉妬で爆発しそうなんだけどね!)
心の中でいつものようにツッコミを入れながら、私は大好きな彼の隣で、新しく始まった幸せな毎日に、最高の「いいね」を教えるのだった。