過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
 しれっと答えるからあきれてしまう。

「どうして私なんですか?」
「返事は考えてくれた?」

 拒むわけない。そんな自信を持った目で聞いてくる。

「理由を知りたいです。正直、ありえないから」
「別にだまそうってわけじゃない。ありのままに話せば、期間限定で結婚してほしい。俺を好きなら小塚さんにとって悪い話じゃないだろう」
「す、好き……とか言わないでください。ここは社内ですよ」

 熱くなる頬を背けたら、樹生はククッと笑った。まるでからかわれているみたいだ。

「悪い。公私混同はしないと約束しよう。そういう潔癖なところもいいと思ってるよ」
「私を選んだのは好都合だからですか?」
「もちろん。小塚さんは俺は絶対裏切らないだろうからね」
「裏切る……?」

 ずいぶん、ぶっそうな話だ。身を引き締めるようにして、じっと彼の目を見つめた。簡単に利用されたくない。そんな思いだったが、彼も真剣に見つめ返してきた。思っていたより、深刻な話かもしれない。

「半年前に亡くなった友澤富一(とみいち)会長は、俺の祖父なんだ」
「え……」

 思いもよらない話に息をのむと、彼はうなずいた。

「苗字が違うのは、俺の母親が、父で社長の洋一と籍を入れなかったからなんだ。まあ、世間的には愛人と思われても仕方ない立場だ。会長の遺言で副社長に就任した俺は、友澤の親戚から反感を買ってる」
「……ご事情はわからないでもないですが、友澤ビルディングに友澤の親戚縁者は働いてないはずです。恨まれていても、気にされなくてよいのでは?」
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