過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「さすがだね。小塚さんの言う通りだからこそ、問題でね」

 敵が見えないから不安なんだろうか。だとしても、偽装結婚したい理由はまったくわからない。

「やつらはどんな手を使ってでも、俺を副社長の座から引きずりおろそうとしてくるだろう」
「社内の人間を利用して……ってことですか?」
「用心しておきたいんだ。俺はアメリカから帰国したばかりで味方がいない。君は秘書だから、社内事情にも詳しいだろう」

 都合がいいというのはそういうことか。社内にいるかもしれない裏切り者をあぶり出すために、協力者が必要なんだろう。

「だから、私なんですね」

 好きな人を絶対に裏切らないと、彼は信じている。それほどの自信があるなんて、自分の魅力も確信しているのだろう。

「でも結婚なんて……」
「四六時中一緒にいても不審に思われないようにするにはそれが一番だろう? もし俺に何かあれば、君に遺産も残してやれる」
「い、遺産っ? そんなの受け取れません……っていうか、副社長にもしものことなんてありませんからっ」

 あわてて答えると、彼は何か面白いものを見つけたみたいに口もとを緩めて笑った。

「小塚さんならそういってくれると思ったよ。信頼してるんだ、君を。だから、この結婚を公にする気はない。君にとって悪い話ではないと思うが?」
「……やつらって、誰かわかってるんですか?」
「契約書にサインしてくれたら教えるよ」

 樹生はビジネスバッグの中から三つ折りにされた紙を取り出し、テーブルの上に置く。

「契約書って……」
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