過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「もちろん、婚姻届だ。週末には小塚さんのご両親にご挨拶して役所に行こう。君をこの件に巻き込んでしまって申し訳ない。これはそのせめてもの責任の取り方だと思ってほしい」

 七海は婚姻届を手に取って広げた。そこにはすでに樹生の署名があり、証人の欄には、友澤洋一の名前が書かれていた。

「社長はすでにご存知なんですね」
「ああ。この結婚は賛成してくれている」

 七海は先ほどの社長の様子を思い浮かべた。秘書は人事が決めたと言っていたが、最初から仕組まれていたみたいだ。

「加賀副社長は、友澤社長によく似ておいでなんですね」

 とんだたぬき芝居にだまされたような気分だったが、彼にとっては切迫した問題でもあるのだろう。

「そうかな。顔は母に似てるとよく言われたよ」
「顔の話じゃないです」
「性格は会長に似てるらしいけどね」

 彼はそう笑って、執務机に置かれていた万年筆をスッと差し出してくる。

「もう聞きたいことがないなら、書いてくれ」
「少しも考える時間くれないんですね」
「断る理由はないと思うからね」
「こんなにズルい人だと思ってませんでした」
「これからわかっていけばいいと思うよ」

 まるで緊迫していない様子で穏やかに言うから、七海はうらみがましく思いながら、万年筆を受け取ると、婚姻届にサインを書き込んだ。
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