過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
 休日の彼は、清潔感のあるカジュアルシャツに、ワックスをつけていない無造作な髪までも魅力的だった。最高の眼福が得られる環境が、そこにはあった。後悔するなんてとんでもない。

 でもどこか、しっくり来ないのは、樹生から愛されていないこの結婚が、期間限定だからだろうか……。

「小塚さん、十三時からの幹部会議は君も出席するように」

 七海はパソコンから顔をあげ、斜め前に席を置く樹生へと目を移す。

「かしこまりました」

 月初めにある幹部会議は、前月の売上や経費の報告、事業計画の決裁などが主な議題だ。参加するのはいつも社長と本部長、あとは各部署の部長である。七海はいつも先輩秘書とともに参加し、資料の準備を手伝ってきた。今日の幹部会議も問題なくやれるはずだ。

「少し打ち合わせしておきたい」
「はい」

 七海はすぐに執務机の前に移動した。彼の手元には会議資料が置かれている。何か不具合でもあっただろうか。そんなはずはないけれど。

 樹生が話し出すのを見守っていると、彼はなぜか資料を閉じた。資料に不満があるわけではないらしい。

「幹部会議に出席する取締役は社長と俺だけで間違いないか?」
「いつも社長のみ参加されています。強いていうなら、監査役の広沼(ひろぬま)圭吾(けいご)顧問弁護士は出席されています」

 記憶する中では、会長が会議に出席したことはない。名ばかりの取締役である会長の妻、友澤のり子の姿もまた、一度も見たことがない。
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