過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「これは以前から進めております重要プロジェクトで、研修を任せているのは、我が社の子会社である友澤ビルマネジメントです。よそから来られた副社長にはわからないでしょうが、相応の金額をお支払いする慣例があるんですよ。つまりは、必要経費です」
樹生は七海を振り返ると、そっと手を差し出す。
「小塚秘書、追加の資料を」
七海がすぐに用意しておいた資料を渡すと、彼はそれを高く掲げた。
「これは、友澤ビルマネジメントと行なった、同様のプロジェクトに対する過去五年分の経費内訳データです。先ほど、本郷本部長は慣例だとおっしゃいましたが、今回のような予算案は二年前から始まっています。これが慣例と言えるのですか?」
「副社長、ちょっとそれを」
洋一が身を乗り出して、手を差しのべる。樹生は本郷から目を離さず、それを渡した。洋一はパラパラと資料をめくり、眉をひそめる。
「たしかに、研修名目の費用が、二年前から……倍どころではないな。スタッフの人数にも疑念がある。これでは、人数と手当、両方とも水増ししたと思われても仕方ないな」
「社長っ、まさかそのようなことは……」
本郷がうろたえるように腰をあげる中、洋一は何やら考えるような表情をする。
「二年前といえば、ビルマネジメントに大規模な入れ替え人事があったな」
「それとこれとは、関係ありません。これはいわれのない言いがかりです。海外のコンサルティング会社に勤めていたか何か知りませんが、なんでも無駄だの不正だのと言われては、我々の士気も落ちてしまいます」
樹生はテーブルに両ひじをつくと、指を組んでじっと本郷をにらみつける。
「言いがかりではありません。数字が示していることを指摘したまでです。この予算案は差し戻します。社長もよろしいでしょうか?」
ひどく低い声だった。こんなにも冷徹で怒りを抑える樹生を見るのは初めてだ。
樹生は七海を振り返ると、そっと手を差し出す。
「小塚秘書、追加の資料を」
七海がすぐに用意しておいた資料を渡すと、彼はそれを高く掲げた。
「これは、友澤ビルマネジメントと行なった、同様のプロジェクトに対する過去五年分の経費内訳データです。先ほど、本郷本部長は慣例だとおっしゃいましたが、今回のような予算案は二年前から始まっています。これが慣例と言えるのですか?」
「副社長、ちょっとそれを」
洋一が身を乗り出して、手を差しのべる。樹生は本郷から目を離さず、それを渡した。洋一はパラパラと資料をめくり、眉をひそめる。
「たしかに、研修名目の費用が、二年前から……倍どころではないな。スタッフの人数にも疑念がある。これでは、人数と手当、両方とも水増ししたと思われても仕方ないな」
「社長っ、まさかそのようなことは……」
本郷がうろたえるように腰をあげる中、洋一は何やら考えるような表情をする。
「二年前といえば、ビルマネジメントに大規模な入れ替え人事があったな」
「それとこれとは、関係ありません。これはいわれのない言いがかりです。海外のコンサルティング会社に勤めていたか何か知りませんが、なんでも無駄だの不正だのと言われては、我々の士気も落ちてしまいます」
樹生はテーブルに両ひじをつくと、指を組んでじっと本郷をにらみつける。
「言いがかりではありません。数字が示していることを指摘したまでです。この予算案は差し戻します。社長もよろしいでしょうか?」
ひどく低い声だった。こんなにも冷徹で怒りを抑える樹生を見るのは初めてだ。