過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
 もごもごと答えると、彼はからかうような目をする。

「俺たち新婚なわけだし、期待してたなら別だけどね」
「は……、や、やめてください。私だって、私を好きな人としか、そういうことしたくないから」
「好きな男なら、なんでもいいわけじゃないのか」

 それってどういう意味だろう。軽率に結婚するような女だから、樹生を襲うとでも心配してたんだろうか。

「樹生さんこそ安心して。寝室に鍵をかけるような真似までしなくても大丈夫だから」
「七海って……」

 きょとんとした彼は、ぷっと愉快げに笑う。本当に何を考えてるのかわからない。

「ほかの場所も見ていい?」
「どうぞ。俺は着替えて、コーヒーでも淹れておくよ」

 樹生はひと足先に階段を降りていく。

(本当に信用してくれてるんだ……)

 初めて訪ねてきた女の人をこんなふうに自由にしてくれるなんて。彼の信頼に応えるためにも、一番奥の部屋だけは開けないようにしよう。きっと、彼がこれまで培ってきた人生のすべてが置かれているだろうから、久しぶりに再会しただけの自分が触れていいものではないだろう。

 二階を見てまわったあと、一階に降りてバスルームやキッチンをのぞき込んだ。まだ生活感はなく、本当にホテルに泊まりにきたみたいな空間が広がっていた。

 リビングの横に一枚のドアがあり、そこが樹生の寝室だろう。ドアを眺めていると、ホットコーヒーの入ったカップを手に持つ彼が、書斎にベッドを持ち込んで寝てるんだ、とだけ言った。

「部屋は決まった?」
「階段に近い方にしてもいい?」
「かまわないよ。二階にはまず行かないから」
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