過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜



 同窓会の案内メールが届いたのは、友澤会長が亡くなり、慌ただしくしていた半年前のことだった。

 もともと友人関係が希薄な上、同期とは社会人になってから交流がなく、欠席するつもりだった。しかし、『樹生くんも来るんだって』というグループメールを見てしまったために、欲望を抑えきれずに出席するという返事をしてしまった。

 そのとき、アイドルの推し活をしていた学生時代の無垢な情熱が、まだ自分の中に残っていたのだと気づかされた。

 名南(めいなん)大学の経済学部に通っていた七海は、大学三年のとき、三歳年上の加賀樹生に出会った。留学のために休学していた彼が復学し、ゼミで出会ったのがきっかけだった。

 グループワークが苦手だった七海は、あえて卒論の執筆があり、一人で黙々と過ごせるゼミを選んだ。出会ったときから、樹生は面倒見がよく、とても同期とは思えないほど物知りで、まるで先輩のように卒論の相談相手になってくれた。

 どう見ても、ディベート向きの樹生が同じゼミにいるのは不思議だったが、彼が在学中にアメリカの大手コンサルティング会社、ケンジー・コンサルティングからスカウトされたと聞いたときは、彼にとって負担の少ないゼミを選んだのだと、勝手に納得したものだった。

 樹生は卒業まで音楽サークルにも所属していて、大学内では有名な才子(さいし)として人気を誇っていた。

 だから、ゼミの中では単なる同期であっても、七海にとって樹生は、好きというにはあまりにもおこがましい、手の届かない「推し」だった。
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