過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
 そんな活動をしていたことは誰も知らなかっただろうが、予想外の出来栄えの良さに喜んでもらえたことはよく覚えている。

「でもなんで、私に頼んできたんだろ……」

 あのときは樹生に頼んだけど断られたからとかなんとか言われた気がするが、材料の買い出しは樹生と一緒に行くことになって、出来上がったうちわを運ぶときも、彼が駅まで迎えに来てくれたりした。

 サークルには女の子たちがいたし、わざわざ自分が作る必要もなかったはずだ。あのときは推し活を思い出して、楽しくて仕方なくて深く考えなかったけれど。

「うわぁ、やっぱりあった」

 うちわの下に隠れていた小さなアルバムを引っ張り出す。エレキギターを弾く樹生の生写真がたくさん入っている。これも、サークルの誰かから、余ったからあげると言われてもらったのだったか。

 こんなものを隠し持ってるなんて樹生に知られたら、気持ち悪がられて、速攻で離婚されかねない。かといって、捨てる勇気はない。

 これから先もずっと、樹生しか好きにならないだろう。これまでもそうだったように。

「七海、やきそば食べよう」

 階段下から声が聞こえて、ハッと時計を見た。気づけば、もう一時間以上が過ぎている。

 あわてて階段を降りていくと、樹生がダイニングテーブルにお皿を並べているところだった。

「少しは片付いたか?」
「あー……、まあ、ちょっとだけ」

 樹生の写真を眺めていて何一つ片付いてないなんて言えない。

「手伝えることがあれば、言ってくれていいから」
「うん、ありがとう。それより、やきそば、樹生さんが作ったの?」
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