過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「誰っていうか……、総務の女子たちがうわさしててさ。誰と結婚したのか聞いてこいって……」

 涼太は気まずそうに口を閉じる。

 樹生と結婚したことはバレてないみたい。旧姓使用の手続きだけは、総務部長が社員に頼んだ……というところだろうか。

「珍しく待ってたのはそういうわけだったんだ」
「いや、別にさ、興味本位で聞きにきたってわけじゃなくて、俺だって、小塚に興味あるし……」
「そこで何を話してる?」

 涼太の後ろから声がして、ひとりの男が近づいてくる。

「加賀副社長っ」

 あわてる涼太の横で、七海は頭をさげた。

「副社長、おつかれさまです」
「そんなところで話してたら迷惑になる。すみやかに帰りなさい」

 じろりと樹生ににらまれて、涼太はあたふたしながら、「お先に失礼しまーす」と小走りで立ち去った。誰にでも人なつこい彼でも、樹生には弱腰になるらしい。

「助かりました」
「仲良さそうだな」

 七海は首をかしげた。そんなふうに見えたんだろうか。

「誰?」
「同期の島岡くんです」
「それだけ?」
「はい」

 樹生は不機嫌そうに眉をぴくりと動かした。

 営業部の、と言わないといけなかっただろうか。でも、樹生が気にするような社員ではないし、話を大きくする必要もないだろう。それより、総務の女子たちのうわさ話の方が気になる。

「あの、私たちもここで話してると迷惑ですよね?」

 涼太と違って、樹生はかなり目立つ。長話をしていたら、また何をうわさされるかわからない。

「そうだな。駅まで送ろう」
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