過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「彼女がいるってことですか?」
「親父はそういう雰囲気に見えたとは言ってたけどね、どうだろう。昨日の話もあったから、気になって今朝、親父に総務にいる社員の顔写真を見てもらった」

 それで、今日ははやく出かけたのだろう。総務に絞ったのは、涼太にうわさ話を聞かせたのが、総務の女子社員だからか。

「誰かわかったの?」
「七海に接触してきた、折田だよ。ふたりの関係はこれから調べるが、どんな関係にしろ、宏弥が彼女に俺たちの結婚を教えたんだろうな」
「友澤の人たちはみんな知ってるんですか?」
「祖母には伝えたから、知ってるだろうね」
「そうなんですかっ?」

 目をぱちくりさせると、樹生はくすりと笑う。

「やけに驚くじゃないか」
「だって……」

 いつか別れるのに、と言いかけて口をつぐんだ。もう言わない約束をさっきしたばかりだ。

「のり子取締役は……反対したんじゃないですか?」
「広沼弁護士を通じて連絡したから、どう思ったかは聞いてない。聞いたところで、俺たちの関係が変わるわけでもないしね」

 反対されようが、永遠に続く関係じゃないのだから、気にしても仕方ないのだろう。

「……そうだね」
「七海はさ」

 樹生がそっと手のひらを重ねてくる。ひんやりしたグラスをつかんでいた冷たい手がぬくもりを取り戻しても、彼は口を開かない。

「どうしたの?」
「……宏弥が七海に近づくよう折田に言ったなら、俺たちの結婚はじきに公になるかもしれない」
「裏切る人を見つけるためなら仕方ないよね。私は大丈夫だよ」

 いつかはバレてしまうだろうと思っていた。時間の問題だったのだから、今さら、樹生が心配する必要はなかった。

「七海が不利益を被らないようにしたいと思ってる」
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