過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
第五話 奪いたい失いたくない
***
翌朝、樹生は『昨日の話は忘れてほしい』と言ってきた。酔っていて、いつになく分別のつかないことを要求してしまったと反省していた。
七海もまた、笑顔で気にしてないと答えたが、その日からあきらかに会話が減った。
立て続けに会食が入り、彼自身が忙しいこともあったが、以前よりも焦るように仕事に励む彼を見ていると、こんな生活は間違っていて、はやく終わらせたがっているように見えた。
心配していた梨々子の件は、涼太によって収束したことを知った。なんでも、山村が総務の全社員に向けて、根拠のないうわさ話をしないようにと苦言を呈したらしい。
そうは言っても、善則親子が簡単に友澤ビルディングの社長の座をあきらめるとも思えない。はやく、晴れて離婚して、これまでと変わらず、樹生の秘書として働けたらいいのにと考える毎日を送っていた。
「結婚する必要なんてあったのかな……」
味方になってほしい。そう言ってくれるだけでよかったのではないだろうか。それでは、彼が安心できなかったのかもしれないけれど。
「まあ……、樹生さんと一緒にいられて、私はうれしいんだけど」
ベッドに仰向けになって、ひとりごとをつぶやいていると、ドアの向こうで、階段を昇ってくる足音がした。
「七海、ちょっといいか?」
「あっ、……はいっ」
彼が部屋を訪ねてくるのは初めてだった。
あわててベッドから飛び起きて、姿見に映った自分をサッと眺めた。くしゃくしゃになっている長い髪を指ですいて、急いで一つに束ね、ドアを開く。
「どうしたの?」
翌朝、樹生は『昨日の話は忘れてほしい』と言ってきた。酔っていて、いつになく分別のつかないことを要求してしまったと反省していた。
七海もまた、笑顔で気にしてないと答えたが、その日からあきらかに会話が減った。
立て続けに会食が入り、彼自身が忙しいこともあったが、以前よりも焦るように仕事に励む彼を見ていると、こんな生活は間違っていて、はやく終わらせたがっているように見えた。
心配していた梨々子の件は、涼太によって収束したことを知った。なんでも、山村が総務の全社員に向けて、根拠のないうわさ話をしないようにと苦言を呈したらしい。
そうは言っても、善則親子が簡単に友澤ビルディングの社長の座をあきらめるとも思えない。はやく、晴れて離婚して、これまでと変わらず、樹生の秘書として働けたらいいのにと考える毎日を送っていた。
「結婚する必要なんてあったのかな……」
味方になってほしい。そう言ってくれるだけでよかったのではないだろうか。それでは、彼が安心できなかったのかもしれないけれど。
「まあ……、樹生さんと一緒にいられて、私はうれしいんだけど」
ベッドに仰向けになって、ひとりごとをつぶやいていると、ドアの向こうで、階段を昇ってくる足音がした。
「七海、ちょっといいか?」
「あっ、……はいっ」
彼が部屋を訪ねてくるのは初めてだった。
あわててベッドから飛び起きて、姿見に映った自分をサッと眺めた。くしゃくしゃになっている長い髪を指ですいて、急いで一つに束ね、ドアを開く。
「どうしたの?」