過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
第六話 愛しているからこそ
***


 遅くならないように急いで帰宅すると、リビングに灯りがついていた。この家のどこかに七海がいてくれるんだと思うだけで、ほっと息が出る。

 車のキーをキッチンのカウンターに置き、シンクに何も置かれていないことに気づいた。七海は料理が得意ではないからと、一緒に食べられるかわからない日は簡単なものを作って食べているようだったが、何も食べていない日は珍しい。

「食べてないなら、レストランに出かけてもいいな」

 昨日は不用意に傷つけてしまった。謝罪したものの、今日一日、彼女は居心地悪そうにこちらの様子をうかがっていた。食事をしながら、ゆっくり話す時間を持つのもいい。

 思い立ったら、車のキーをポケットに入れていた。階段下に行き、「七海」と声をかけたが、見上げた先は真っ暗だった。

「もう寝たのか?」

 時計を見ると、まだ二十時だった。灯りをつけ、部屋のドアをノックしたが、やはり返事はなかった。

 仕方なく、ネクタイをゆるめながら階段を降り、ふと、バスルームにつながる廊下の灯りがついているのに気づいた。

「風呂か……」

 もう出かける気はおきないだろう。ひどくがっかりしながら、ジャケットを脱ぎ、ネクタイを外す。グラスに水を注いで飲んだ。

 喉を流れる水の音まで聞こえてくるような静けさがリビングに広がっている。バスルームから水の音が聞こえない。七海の気配さえも。

 ふと嫌な予感がして、バスルームのドアを叩いた。

「七海、いるのか?」

 やはり、返事はない。しかし、ドアの隙間から光が見える。

「開けるよ」
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