過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
声をかけて、ドアを開いた。息が止まるかと思った。白いマットの上に倒れ込む、長い黒髪と白い背中が見えた。
「七海っ!」
バスタオルをつかむと、細い体に巻いて抱き上げた。目を閉じる彼女の顔色は真っ白だったが、体はまだ温かかった。
「七海っ、大丈夫か?」
そっと頬に触れたら、身じろぎした。それから何度か名前を呼ぶと、何やら幸せな夢を見ているようにわずかに微笑んで、小さな寝息を立てた。
「寝てる、だけか……?」
全身の力が抜けた。大きく息を吐き出し、彼女を抱いたまま、リビングの横にあるドアを開いた。
机とベッドがあるだけの部屋だ。七海が決して入ってこようとしないその中へ、彼女を連れて入った。
ベッドの上に寝かせると、ブランケットをかぶせた。髪はまだしっとりと濡れている。バスタオルでぬぐってやり、頭に傷がないか、するすると触って確認した。さいわい、どこにもけがはないようだった。
そのまま小さな顔を両手で包み込んだ。幾分、顔色はよくなっていた。
長い髪をからめ取るように、指ですくいあげる。仕事中はいつも後ろで一つにまとめているが、こうして下ろしているときの方があどけなさがあって可愛らしい。
初めて出会ったときもそうだった。
七海は覚えていないだろう。大学二年の春休みのことだ。知り合いがコンサート会場でアルバイトをしないかと声をかけてくれ、一日だけならと引き受けた。
あれは、当時やたらと人気のあったアイドルグループのコンサートだったか。
コンサートも中盤に差し掛かったころ、ドリンクの販売所にいると、ひとりの女子高生が不安そうに声をかけてきた。それが七海だった。
「七海っ!」
バスタオルをつかむと、細い体に巻いて抱き上げた。目を閉じる彼女の顔色は真っ白だったが、体はまだ温かかった。
「七海っ、大丈夫か?」
そっと頬に触れたら、身じろぎした。それから何度か名前を呼ぶと、何やら幸せな夢を見ているようにわずかに微笑んで、小さな寝息を立てた。
「寝てる、だけか……?」
全身の力が抜けた。大きく息を吐き出し、彼女を抱いたまま、リビングの横にあるドアを開いた。
机とベッドがあるだけの部屋だ。七海が決して入ってこようとしないその中へ、彼女を連れて入った。
ベッドの上に寝かせると、ブランケットをかぶせた。髪はまだしっとりと濡れている。バスタオルでぬぐってやり、頭に傷がないか、するすると触って確認した。さいわい、どこにもけがはないようだった。
そのまま小さな顔を両手で包み込んだ。幾分、顔色はよくなっていた。
長い髪をからめ取るように、指ですくいあげる。仕事中はいつも後ろで一つにまとめているが、こうして下ろしているときの方があどけなさがあって可愛らしい。
初めて出会ったときもそうだった。
七海は覚えていないだろう。大学二年の春休みのことだ。知り合いがコンサート会場でアルバイトをしないかと声をかけてくれ、一日だけならと引き受けた。
あれは、当時やたらと人気のあったアイドルグループのコンサートだったか。
コンサートも中盤に差し掛かったころ、ドリンクの販売所にいると、ひとりの女子高生が不安そうに声をかけてきた。それが七海だった。