過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
*
「午後の予定は全部キャンセルだ」
社長に呼び出されて戻ってくるなり、樹生はジャケットを羽織った。
「どちらに行かれるんですか?」
「名北駅前ビルの建設現場へ視察に行ってくる」
樹生が急きょ、直接出向くなんて、よほどのことが起きたのだろうか。
「かしこまりました。……あの、副社長、少しご報告したいことがあるんですが、よろしいですか?」
「なんだ?」
ビジネスバッグに資料の入ったファイルを入れている樹生に、思い切って声をかけた。
「島岡くんのことです」
樹生が手を止めてこちらに顔を向けた。
「営業部の松尾という島岡くんの先輩が、彼に友澤ビルマネジメントの営業を任せたそうなんです」
「それが?」
「そういうのは珍しいと思って」
「何かよくないことが起きてると思ったのか?」
「……そうです。気にしすぎかもしれませんが」
樹生が副社長になってから、社内での不穏な動きが明らかになってきている。なんでも何かあるように思えてるだけかもしれない。
忙しい樹生を煩わせる余計な話だっただろうか。不安になっていると、彼は小さく笑った。
「俺は島岡を誤解していたようだね」
「……どういうことですか?」
彼は時計を確認すると、バッグにしまったファイルを再度取り出し、執務机の上に開いた。
「名北駅前ビルの図面ですね」
七海がのぞき込むと、彼は何枚かの紙を見せてくる。請求書のようだ。
「ビルに使われている建材の一部に、請求書とは違う、グレードダウンされた建材が使われている可能性があるとわかった」
樹生は請求書を指差す。
「友澤ビルマネジメントに渡した請求書と、我が社の請求書の内容が違うと、さっき、島岡が言いに来てね」
「午後の予定は全部キャンセルだ」
社長に呼び出されて戻ってくるなり、樹生はジャケットを羽織った。
「どちらに行かれるんですか?」
「名北駅前ビルの建設現場へ視察に行ってくる」
樹生が急きょ、直接出向くなんて、よほどのことが起きたのだろうか。
「かしこまりました。……あの、副社長、少しご報告したいことがあるんですが、よろしいですか?」
「なんだ?」
ビジネスバッグに資料の入ったファイルを入れている樹生に、思い切って声をかけた。
「島岡くんのことです」
樹生が手を止めてこちらに顔を向けた。
「営業部の松尾という島岡くんの先輩が、彼に友澤ビルマネジメントの営業を任せたそうなんです」
「それが?」
「そういうのは珍しいと思って」
「何かよくないことが起きてると思ったのか?」
「……そうです。気にしすぎかもしれませんが」
樹生が副社長になってから、社内での不穏な動きが明らかになってきている。なんでも何かあるように思えてるだけかもしれない。
忙しい樹生を煩わせる余計な話だっただろうか。不安になっていると、彼は小さく笑った。
「俺は島岡を誤解していたようだね」
「……どういうことですか?」
彼は時計を確認すると、バッグにしまったファイルを再度取り出し、執務机の上に開いた。
「名北駅前ビルの図面ですね」
七海がのぞき込むと、彼は何枚かの紙を見せてくる。請求書のようだ。
「ビルに使われている建材の一部に、請求書とは違う、グレードダウンされた建材が使われている可能性があるとわかった」
樹生は請求書を指差す。
「友澤ビルマネジメントに渡した請求書と、我が社の請求書の内容が違うと、さっき、島岡が言いに来てね」