過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
「社長の呼び出しは、その話だったんですね」
「さすがに島岡も危機感があったんだろう。直接、営業部長とともに社長に報告に来た。賢明な判断だ」
「グレードダウンが、故意に行われたってことですか?」

 そのことに、松尾から仕事を引き継いだ涼太が気づいた。だとしたら、その不正を行ったのは……。

「担当は、その松尾という男だ。彼は数日前に退職届を出している。無傷で逃げる気だろうが、今回の視察を機に懲戒免職に持っていくつもりだ」
「でも、一社員がひとりでできるようなことなんですか?」
「おそらく、宏弥が関わっているだろう。松尾が宏弥に過剰な接待をしていたことは、営業部の中でもひそかにうわさされていたらしい。グレードダウンの手口を指南してもらっていたんだろう」

 グレードダウンによって生じた差額を、松尾は個人口座に入れていた。その金で、宏弥を接待していたのだと、樹生は話した。しかし、それだけでは、宏弥の罪は問えないのではないだろうか。

「証拠はあるんですか?」
「それは今から見つける。宏弥がグレードダウンの事実を知っていたかどうか……それが鍵になる」
「手立てがあるんですね」
「島岡に頼んだ。俺が視察に行くから、マネジメントから誰か立会人を用意するよう伝えるように。宏弥はあわてて飛んでくるだろう」
「来なかったら?」
「来るさ。あいつは単純なんだ」

 グレードダウンした証拠を隠滅するため、宏弥が直接なんらかの支持を現場に出すはずだ。そこを突破口にしようと考えているみたいだった。

 そんな一か八かの賭けみたいなことをしようとしているのは、すでに退職届を出している松尾に制裁を加えるためか。最悪、宏弥の関与はいくらでもあとから見つけられると踏んでいるのかもしれない。
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