過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜
 しかし、そんな現場に樹生が一人で向かうなんて……。心配でたまらない。なぜ、気をもませるような話をここまでしたのだろう。

「どうした?」

 考え込む七海に、樹生が眉をひそめて尋ねてくる。

「全部、話してくれるんですね」

 これまで、社員の不正をあきらかにするために、樹生がここまで話してくれたことはなかった。

「素直になると決めたんだ」

 意外な言葉に、七海はまばたきをした。彼は恥じるような顔をして、小さく嘆息するとまぶたを伏せた。

「臆病になってたんだ。だから、なんでも手の内を見せて話す必要はないと思ってた」
「私の信用が足りなかっただけです」
「それは違う。小塚さんが知らないこともあるんだよ。だから、これからはちゃんと伝えるようにする。仕事はもちろん、ほかのことも」
「……どうして結婚したのかも?」

 思わず、口をついて出た言葉を、取り消せもしないのに、あわてて口に手をあてた。

 絶対的な味方がほしいから結婚しよう。そんな言葉はごまかしだ。それを疑っていたことが、伝わってしまっただろう。

 彼は優しく目を細めて微笑む。

「帰ったら、話すよ。心配ない。視察して帰るだけだから」

 彼がそう言うのだから、無理はしないはずだ。それを信じて待つのも、彼を信用していると伝えることにつながる。

「何かあればご連絡します」
「行ってくるよ」

 やっぱりついていきたい。その言葉は飲み込んで、七海はゆっくりと頭を下げた。

「行ってらっしゃいませ、副社長」
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